2025年風営法改正で変わるナイトビジネスの広告規制を徹底解説

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コラム

目次

1.はじめに|風営法改正で夜の広告が大変革

2025年6月28日の風営法改正を機に、歌舞伎町や繁華街で見慣れた「売上No.1」や「伝説」「レジェンド」の看板が消えました。ホストクラブ・キャバクラのオーナーやスタッフの間では、「うちの看板、全部やり直しか」「SNS投稿もアウト?」「イベントはどうすれば」など、業界では緊張と戸惑いが広がっています。

 

今回の風営法改正の本来の目的は、ホストクラブでの高額売掛や風俗・AV出演の強要といった、深刻な社会問題への対応にあります。しかし、その一環として警察庁から広告宣伝に関する具体的な規制内容が通達され、業界関係者に大きな影響を与えることになりました。

 

これまで業界の慣習として黙認されてきた表現や手法が、通達によって一転、厳しく取り締まられる対象になり、現場では混乱が広がっています。

今回の規制強化を受けて、店舗オーナーだけでなく、現場のスタッフや広報・マーケティング担当者、デザイナーなど、関係者全員が最新情報の共有と体制の見直しを迫られています。

従来の“当たり前”が通用しなくなった今、ナイトビジネスの広告運用は大きな転換点を迎えたといえるでしょう。

 

 

2.規制対象となる「広告」の範囲とは

今回の改正で、広告規制の範囲は「客の目に触れるものすべて」に及びます。実際に来店する顧客のみならず、通行人やWeb・SNSを利用する一般人も含まれるため、店外・店内問わず、あらゆる掲示物や発信が対象となります。

 

例えば、下記のような媒体はすべて規制対象です。

  • ・店外の看板・ポスター・ネオン・デジタルサイネージ
  • ・店内のパネル・ポップ・壁紙・スタッフ紹介パネル
  • ・紙のチラシ・ビラ・広告用名刺
  • ・公式Webサイト・SNSアカウントのプロフィール・投稿・ハッシュタグ
  • ・アドトラック(宣伝カー)や移動式の大型看板

特にアドトラックなどの移動型広告物は、公道や駅前広場など不特定多数が通行する場所で内容が容易に判別できる場合、厳しく規制の対象となります。ビラ配りやプラカード、サンドイッチマンのような手持ち広告も例外ではありません。

また、広告と認識されにくいものも注意が必要です。

例えばスタッフの名刺も、単なるあいさつ用途ではなく客引きや集客を意図して配布する場合、「広告的性格あり」とみなされます。SNS初心者のスタッフやデジタル担当者が「個人発信のつもり」で行ったとしても、集客目的が明白な場合は規制の対象となってしまう恐れがあります。

 

 

3.具体的に禁止された広告表現

風営法改正にあたって警察庁により発出された「接待飲食営業における広告及び宣伝の取扱いについて」という通達では、特に以下のような表現が禁止されました。

 

【営業成績アピールの禁止】

「年間売上〇億円突破」、「○億円プレイヤー」、「指名数No.1」、「億超え」、「億男」など

 

【役職・称号の誇示の禁止】

「総支配人」、「幹部補佐」、「頂点」、「winner」、「覇者」、「神」、「レジェンド」、「新人王」など

 

【競争や“推し”を煽る表現の禁止】

「売上バトル」、「カネ」、「SNS総フォロワー数○万人」

「○○を推せ」、「○○に溺れろ」など

 

これは屋外広告、アドトラック、店内パネル、SNS、Webサイト、ビラ配りなど、すべての媒体に適用されます。SNSのハッシュタグやプロフィール欄も例外ではありません。

さらに、これまで使われてきた業界用語や隠語表現であっても、警察による解釈次第では規制違反となる恐れがあります。過去の投稿やデータベースに残るプロフィール情報も遡ってチェックが入るケースがあるため、現場は徹底した見直しが必要です。

 

参考:警察庁|接待飲食営業における広告及び宣伝の取扱いについて(通達)

 

 

4.違反リスクと現場で注意すべきポイント

今回強化された広告規制は、「過度な飲食や遊興をあおらないこと」という新たな遵守事項に含まれると、警察庁の通達で明確に示されています。さらに、店舗でこのような内容の広告や宣伝を行うと、営業所の構造・設備の維持義務違反にも該当する可能性があると示唆されました。

これらに違反した場合は、風営法第25条に基づき、行政から指示処分を受けることになります。

 

【現場での主な注意点】

  • ・店内掲示物(パネル・POP・スタッフ紹介)も広告とみなされる
  • ・SNS・Webサイトの過去投稿やプロフィールも規制対象
  • ・名刺も広告的に配布すれば規制の範囲
  • ・アドトラックやビラ配り、移動式広告は即警察の目に留まりやすい
  • ・拡声器など音声による宣伝も規制される

 

経営サイドだけでなく、現場で日々お客様に接するスタッフ、広報・広告担当者、Web運用チームすべてが「広告とみなされ得る表現とは何か」を正しく理解し、ガイドラインを共有できているかどうかが、今後のリスク回避のカギを握ります。

 

 

5.いま現場で起きている変化と新たな集客戦略

「売上成績」「ランキング」「No.1」などが広告で使えなくなったことで、ナイトビジネスの集客・ブランディングは大きな再構築を迫られています。

改正後は、「すごい人」「次にすごい人」などといった表現で、直接的な数値や順位を避けることで規制を回避しようとするケースも見られるようになりました。しかし、こうした言い換えも警察の解釈や今後の運用によっては、同様に違反とみなされるリスクがあります。実際に、業界内では「何をどこまで許されるのか分からない」といった声も多く、現場は手探りの対応を強いられているのが現状です。

 

5-1.“売上”から“空間価値”・“サービス品質”へ

これまでの「売上主義」や「No.1競争」に頼らない、接客や空間演出、店舗コンセプトの魅せ方を模索する店舗が増えています。

例えば、「ラグジュアリーな非日常空間」「落ち着いた大人の社交場」「こだわりのカクテルと音楽」など、売上やランキングを離れた“価値創造”型のコンテンツが注目されています。

 

5-2.現場スタッフへの教育が急務

スタッフへのコンプライアンス教育も急務となっています。従来なら「ちょっとした自慢」「ジョーク」として許容されていたSNS投稿や接客時のトークも、いまや即違反となる可能性があります。

そんな事態を防ぐためには、店舗それぞれで運用マニュアルを作成し、定期的な研修やミーティングを実施することが不可欠になるでしょう。

SNS運用についても、エンタメ性や店舗の世界観を生かした動画・写真コンテンツの工夫や、スタッフ紹介の表現方法の見直しなど、クリエイティブな発想が求められる時代に突入しています。

 

 

6.まとめ|「知らなかった」では済まされない新時代へ

2025年の風営法改正は、ナイトビジネスの広告宣伝に「これまでの常識」を一変させました。

看板やアドトラック、SNS、Webサイト、店内のパネルまで、すべてが警察の監視対象に。

「うちは大丈夫」と思っていた店舗も、何気ない表現で指摘を受けるケースが相次いでいます。

今後は、広告ごとに「これはOK?」「NG?」と悩む場面が続くはずです。

トラブルや不利益処分を回避するため、最新の規制内容を正確に押さえ、日々の運営に反映させていくことが不可欠です。

 

もしも「この表現は大丈夫?」「店内パネルやSNS運用はどうしたらいい?」と少しでも不安や疑問を感じたら、ナイトビジネス専門の行政書士にご相談ください。

行政書士法人ARUTOでは、現場の実情に即した広告チェックや運営アドバイス、許認可手続きのサポートまで幅広く対応しています。

安心して営業を続けるためにも、ぜひお気軽にご連絡ください。

 

併せて読んでいただきたい記事:客待ち防止条例の制定

               2025年 風営法改正の概要

 

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