ビアガーデンやトレーラーハウスで深夜営業はできる?許可取得のポイントを行政書士が解説

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コラム

目次

1.はじめに

夏の風物詩であるビアガーデンや、近年注目が高まるトレーラーハウス・コンテナハウスを活用した飲食店。こうした店舗で「深夜営業」を計画される経営者様も増えていますが、深夜帯の営業には通常の屋内店舗とは異なる許可要件や解釈が必要になるケースがほとんどです。

この記事では、行政書士の立場から、ビアガーデンやトレーラーハウス・コンテナハウスで深夜営業を行う際のポイント、許可取得の注意点、具体的な手続きについてわかりやすく解説します。

 

 

2.深夜営業許可とは?──まず知っておきたい基礎知識

飲食店が深夜0時以降にお酒を提供して営業を続ける場合、「深夜酒類提供飲食店営業開始届」(いわゆる深夜営業許可)を管轄の警察署に届出る必要があります。これは風営法に基づき規定されている制度で、深夜時間帯の治安維持や騒音、トラブル防止の観点から厳格な管理が求められています。

 

 

2-1.深夜営業が必要となるケース

例えば、バーや居酒屋といった飲食業態はもちろん、ビアガーデンやイベント型のレストランなど、「午前0時以降も酒類を提供して営業したい」場合には、この届出が原則必要です。

なお、通常の飲食店営業許可とは異なり、営業形態や施設の構造、周辺環境など、より詳細な基準が設けられています。

 

2-2.深夜酒類提供飲食店営業開始届の概要と流れ

深夜営業開始届を提出する際は、事前に店内の図面や営業の詳細、周辺の環境状況などをまとめた書類を準備します。警察署による実地調査や、各種要件の確認が行われ、内容に問題が無ければ営業が認められます。

ただし、屋外店舗や仮設店舗の場合、一般の店舗と異なる判断が下されることがあるため注意が必要です。

 

 

3.ビアガーデンは深夜営業できるのか?

夏季限定で人気のビアガーデン。公園や屋上、イベントスペースなどで営業されるケースが多いですが、深夜営業の可否には法的な制約が存在します。

 

 

3-1.ビアガーデンの多くは「建築物」ではない

一般的なビアガーデンは、テントや簡易な仮設設備で営業されることがほとんどです。この場合、建築基準法上の「建築物」には該当せず、屋外営業とみなされます。深夜酒類提供飲食店営業開始届は、基本的に「建築物内の店舗」を前提としており、屋外や半屋外の仮設店舗、テラス席は原則として深夜営業の対象外です。

また、テラス席を設置する場合、飲食店営業許可とは別に「屋外客席設置届」を保健所に届け出る必要があります。テラス席の設置・運用には、座席数や配置、調理設備の設置禁止、屋内エリアとの隣接、境界の区画化など、さまざまな行政ルールが定められています。例えば、屋外部分の座席数は店内の座席数を超えてはならず、急な悪天候時にはテラス席利用者を屋内に収容できるようにすることなどが条件です。

 

3-2.仮設屋根や壁なし空間では深夜営業不可

屋根や囲いだけの仮設空間――例えば、テントやパーティションで仕切っただけのスペースでは、「屋内」とは認められません。このため、午前0時以降の営業は法的な要件を満たせず、深夜営業は原則として不可となります。

また、騒音や臭気、虫の混入など、テラス席特有の衛生・近隣トラブルにも十分な配慮が必要です。店舗周辺の生活環境保持が重視されるため、深夜帯の屋外営業は原則禁止されています。

 

3-3.午前0時以降も営業したい場合の現実的な対応

それでも「深夜帯もビアガーデン営業を続けたい」と考える場合、常設の飲食店(建築物内)と併設し、0時以降は屋内スペースのみに営業を切り替える方法が現実的です。この場合、建物部分については深夜営業許可が取得可能であり、法令を順守すれば営業を継続できます。深夜営業許可申請時は、テラス席を除外した屋内客室のみを申請客室とする必要があります。

なお、テラス席を設ける際は、店内とテラス席が隣接していること、テラス席の境界を植栽やロープ等で明確に区画すること、調理設備・バイキングコーナー等を設置しないことなど、保健所への事前相談や事後の変更届も不可欠です。道路や公園などにテラスを設置する場合は、占用許可・使用許可も必要となります。

 

 

4.トレーラーハウス・コンテナハウスは深夜営業できるのか?

トレーラーハウスやコンテナハウスは近年、移動型・仮設型店舗として人気を集めています。これらを活用した飲食店やバーで深夜営業を検討する場合、どのような点に注意すべきでしょうか。

 

4-1.一定の条件下で深夜営業可能!

トレーラーハウスやコンテナハウスは、固定された建物に見えないため「建築物扱いにならない」と誤解されがちです。しかし、実際には客が屋内空間で飲食をする場合、多くの自治体や警察は「屋内型飲食店」とみなします。

そのため、所定の深夜酒類提供飲食店営業開始届を提出すれば、一定の条件下で深夜営業が可能となります。柔軟な店舗形態でも、しっかりと届出を行うことで深夜営業が認められるのは大きなメリットといえるでしょう。

 

4-2.ポイントは「屋内」の定義と用途の明確化

深夜営業許可が認められるには、店舗が「屋内空間」として明確に区分けされていることが重要です。トレーラーハウスやコンテナハウス内に、壁やドアで仕切られた客席があり、外部と遮断できる構造であれば、原則として深夜営業許可の取得が可能です。

一方で、テラス席や屋外に設置したスペースは「屋内」には該当せず、深夜営業の対象外となります。

 

4-3.車両登録状況や固定性もチェックポイント

トレーラーハウスやコンテナハウスが「車両」として登録されている場合や、地面に固定されていない場合、管轄の行政によっては屋内店舗として認められないこともあります。営業地の自治体や警察に事前に確認し、必要に応じて設置方法や用途の見直しが求められます。

 

 

5.屋外店舗で深夜営業を検討する際の注意点

ビアガーデンやトレーラーハウス以外にも、屋外型の飲食店やイベント会場で深夜営業を検討するケースは増えています。しかし、屋外店舗には特有の注意点が存在します。

 

「屋根がある=OK」は誤解

「テントや屋根があれば深夜営業できる」と思われがちですが、風営法や警察の運用基準では「屋内=壁やドアで囲われ、外部と遮断できる空間」と明確に定義されています。したがって、単に屋根があるだけの屋外席やテラス席は、原則として深夜営業は認められません。

 

行政によって判断基準が異なる場合も

屋外店舗に対する深夜営業許可の判断は、管轄する警察署や自治体によって微妙に異なる場合があります。地域の治安状況や周辺環境、過去のトラブル事例などを踏まえ、個別に審査されることが多いため、事前の相談・確認が不可欠です。

 

 

6.まとめ|営業形態に応じた適切な許可取得と店舗計画を

これからビアガーデンやトレーラーハウス、コンテナハウスなどで深夜営業を計画されている方は、必ず営業形態ごとの法的要件や許可基準を押さえておくことが大切です。屋外型や仮設型店舗は、通常の飲食店よりも判断が難しいケースが多いため、早い段階で行政書士など専門家に相談すれば、トラブルを未然に防げるでしょう。

 

ナイトビジネス専門の行政書士法人ARUTOでは、屋外店舗・テラス席のあるお店の飲食店営業許可および深夜営業許可取得を多数サポートしてまいりました。

事前のプランニングから書類作成、警察署への対応まで、円滑な許可取得を全力でご支援いたします。深夜営業をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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