目次
1.「深夜酒類提供飲食店」の概要
深夜時間帯(午前0時から午前6時まで)に酒類を提供する飲食店を営業する場合には、管轄の警察署へ届出を済ませておく必要があります。
この届出を「深夜酒類提供飲食店営業開始届(深夜営業許可)」といいます。
根拠となるのは、風営法の第33条(深夜における酒類提供飲食店営業の届出等)における以下の条文です。
酒類提供飲食店営業を深夜において営もうとする者は、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する公安委員会に、次の事項を記載した届出書を提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
二 営業所の名称及び所在地
三 営業所の構造及び設備の概要
「深夜酒類提供飲食店」の届出が必要な飲食店とは
届出が必要かどうかを判断するポイントは次のとおりです。
1.酒類を提供する飲食店である
2.常態的に深夜(午前0時から午前6時まで)に酒類を提供する
3.主食を主に提供しない
以上の3つのポイントに当てはまる場合には「深夜酒類提供飲食店」の届出が必要となります。
想定されるのはお酒の営業がメインとなる、居酒屋、立ち飲み屋、ダイニングバーといった店舗です。一方で、主食をメインとするイタリアンレストランや中華料理屋、ラーメン屋やファミレスなどは届出不要と捉えられるでしょう。
ただし、これらにも個別の判断が必要となります。深夜営業については事前に警察署に確認をすることが重要です。
また、「深夜酒類提供飲食店」は「風俗営業法」と原則併せて営業することはできません。
特に接待行為ができない点には注意が必要です。従業員による接待が伴う場合は風営法1号許可の取得が必要で、無許可の場合は2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金または併科という重い罰則が設けられています。
スナックやキャバクラなど、接待を主とする業態の飲食店は「深夜酒類提供飲食店」ではなく風営法1号許可申請を検討しましょう。
2.「深夜酒類提供飲食店」届出の流れ
「深夜酒類提供飲食店」許可を取得するまでの流れは次のとおりです。
- 1.飲食店営業許可の申請・許可の取得
- 2.深夜酒類提供飲食店営業開始届出書の提出
- 3.届出が受理された10日後から営業が可能
前提として「深夜酒類提供飲食店」を届け出る前には、「保健所の飲食店営業許可」を受けていることが必須条件となります。
さらに「深夜酒類提供飲食店」届出のためには、各種書類や店舗図面を用意しておく必要があり、事前申請が必要な書類などは入手までにある程度時間がかかる可能性があります。
届出が受理されても営業開始までに10日程度を要するため、先にオープン日が決まっているような場合には、余裕を持ったスケジュール調整が重要です。
また「深夜酒類提供飲食店」は許可申請ではなく届出のため、警察署への手数料はかかりません。自分自身で届出を行えば手続きにかかる費用を大幅に抑えられるでしょう。
しかし、申請書類や詳細図面の作成、警察署や内装業者との打合せなどを、開業準備と並行して行うには大変な量力を必要とします。
新規オープンの場合で費用対効果を考えれば、「飲食店営業許可」と「深夜酒類提供飲食店」をセットにして、その道のプロ・行政書士へ依頼する方が得策といえそうです。
3.行政書士の報酬比較
行政書士事務所10社の報酬比較結果
それでは「深夜酒類提供飲食店」届出にかかる行政書士の費用を実際に見ていきましょう。
当事務所とホームページで検索した都内近郊の事務所を合わせた計10社の報酬を比較してみました。
ちなみに、ほとんどの事務所において「深夜酒類提供飲食店」と「飲食店営業許可」のセット料金を設定していたため、単体料金とセット料金をともに記載します。
行政書士事務所 |
深夜酒類提供飲食店 |
深酒+飲食セット |
A事務所(東京) |
185,000円~ |
185,000円~ |
B事務所(東京) |
55,000円~ |
80,000円~ |
C事務所(東京) |
44,000円~ |
165,000円~ |
D事務所(埼玉) |
140,000円~ |
― |
E事務所(東京) |
99,000円~ |
111,000円~ |
F事務所(東京) |
77,000円~ |
111,500円~ |
G事務所(横浜) |
110,000円~ |
142,400円~ |
H事務所(東京) |
69,000円~ |
102,000円~ |
I事務所(東京) |
85,600円~ |
96,400円~ |
行政書士法人 ARUTO(恵比寿) |
98,000円~ |
110,000円~ |
「深夜酒類提供飲食店」届出の費用相場
10社を比較においては「深夜酒類提供飲食店」届出を行政書士に依頼した場合にかかる費用平均値(相場費用)は約95,000円でした。
内税か外税の表示がないホームページもいくつかあったため、実際の平均相場はもう少し上がりそうです。
ホームページで調べた限りだと、10社中の最低料金は44,000円、最高料金は185,000円と、5倍近くの価格差があることが分かります。
「深夜酒類提供飲食店」単体は多少高額でも、「飲食店営業許可」とのセット料金については割安に設定している事務所が多い点は注目でしょう。
一般的にサービスに含まれる内容は、施設基準の確認、提出資料の確認・アドバイス、届出書・図面作成、警察署への届出といった項目です。
しかし、事務所によっては図面作成や届出、現地確認、住民票などの取得について別途費用を必要とするケースもあり、一様に比較できるものではないという点には注意が必要です。
また、ほぼすべての事務所が該当となる店舗の面積に応じて追加費用を設定しています。実際の報酬を把握するには、個別のケースで費用確認をすることが重要です。
4.まとめ~最適な行政書士事務所の選び方~
行政書士事務所は単に安い報酬の事務所に頼めばいいというものでもなく、内容の充実度などを見極めることも大切。
ホームページだけの情報でベストな行政書士事務所を選び出すのはとても難しいことですが、選ぶ際にはいくつかのポイントがあるのでご紹介します。
- 1.アクセスのいい場所に事務所を構えているか
- 2.電話、問い合わせのメールにすぐに対応してくれるか
- 3.行政書士が複数対応しているか
- 4.風営法専門の事務所であるかどうか
- 5.実績が多い事務所であるかどうか
行政書士事務所は、一人経営している方が多い業種です。一人経営を悪く言うつもりはないのですが、どうしても一人経営ですと、スピーディに業務を進めるのには限界があります。
そのため、住民票や戸籍、使用承諾などの必要になる書類集めをお客様ご自身に用意させる事務所も多いのが事実です。
例えば、事務所のホームページで幅広く業務を扱っている中に深夜営業の手続きを扱っている場合は専門性が高いとは言えないかと思いますし、新人の方が業務を受注するのに安請負いをしていることも時々あります。
風営法関連の業務を行っていると、依頼をした行政書士の動きが悪いという理由でお客様が途中で行政書士を乗り換えるということもよくあります。
行政書士の専門性・経験値によって、申請にかかる日数、警察署や内装業者との調整など、進行の度合いは大幅に変わります。一日でも早くオープンする日を迎えることができれば売上を上げることができます。
「深夜酒類提供飲食店」であれば、風営法専門の行政書士に依頼することで、ストレスなく最短の道のりで開業に至れるでしょう。
当事務所では、年間300件を超える風営法の申請に携わっており、経験豊富な行政書士が複数対応していますので、深夜営業許可で疑問をお持ちの方はお気軽に当事務所までお問い合わせください。
参考記事:風営法業務を依頼する行政書士の選び方