目次
1.はじめに ~不動産会社選びは超重要~
お店を始めるにあたり、物件を探すことは最重要課題です。
- ・できるだけ立地のいい場所で
- ・できるだけ費用を抑えて
などと経営者のみなさんはお考えのことだと思います。
当法人は行政書士事務所で、都内近郊を中心に年間約300件の風営法の申請手続きに携わっています。
既に物件を契約されてからご依頼を受けることが多いのですが、年間に十数件は、「ここの物件は、風営法許可が申請できない場所です。」と、ご案内することはよくあることです。(物件契約は自己責任となることがほとんどですので、注意してください。)
また逆に、「こんな立地のいい場所の物件をよく契約できましたね、ここなら集客が期待できますね!」ということもあります。
そんな当法人から不動産探しについて言えることは、不動産は情報合戦です。
良い物件情報を取得するためには、いい不動産屋さんに巡り合わなければいけません。
不動産会社の数は、約34万店舗と実はコンビニの数よりも多く、実は風俗営業許可に慣れていない不動産屋さんがほとんどなのです。
この記事では、不動産屋さんの探し方のコツと風営法の注意点について解説していきたいと思います。
1-1.風俗営業には種類がある
まず、一括りに風俗営業と言っても、種類がありますのでご自身がされる営業が風俗営業の何に当たるのかを確認していただければと思います。
- 1.性風俗特殊営業(デリヘル、アダルト映像送信、デートクラブ、通販アダルトショップなど)
- 2.風俗営業(スナック、キャバクラ、ダンスクラブ、麻雀店、ゲームセンター・アミューズメントなど)
- 3.深夜営業(バー、居酒屋など)
風俗営業は大きく分けて上記3つのグループに分かれますので、各営業の物件取得方法について解説していきたいと思います。
2.デリヘル可能物件について(待機所は、さらに難易度が上がる)
デリヘル、アダルト動画配信事業(映像送信型)、デートクラブ、通販のアダルトショップなどは、性風俗特殊営業という括りに分類されます。(風適法第2条第5号)
この部類に入る営業であれば、物件を所有するオーナーさんから上記営業をしてもいいという使用許可(正しくは、使用承諾と言います。)が頂けたら警察への申請は可能です。
物件(営業所)の周りに、学校があるかや病院があるかなどと言うのは関係ありません。
不動産会社は、レインズやATBBという不動産会社専用のサイトを使って、条件を絞り込んで物件を検索をします。
全国どこの不動産屋でも物件検索はできます。その街にある不動産だから情報を多く持っているということは一概には言えません。
普段、私たちが不動産会社で見る募集図面には、性風俗特殊営業が可能であるかなどは掲載されていません。不動産会社が目星をつけた物件を1件ずつオーナーに確認をして、デリヘル可能物件であるかを調べるということをしてデリヘル可能物件を探し出します。
ほとんどのオーナーは、性風俗特殊営業の使用許可は下ろしてくれず、100件当たってみて、使用許可が下りる物件がゼロというのも珍しいことではありません。
ただし、デリヘル事務所と言っても、パソコンと電話さえあれば営業ができる事業ではあります。事務所に人の出入りが多いものではありませんので、デリヘル事業を理解するオーナーであれば認めてくれる方もみえます。
営業マンの交渉次第で事業の理解を得て、デリヘル事務所としての使用許可を下ろしてくれるということがあります。これが、不動産会社の力量です。
待機所は、さらに契約が難しい
デリヘルの事務所に待機所も設けるという条件ですと、さらに使用許可の難易度が上がります。
デリヘルの待機所にするということは、キャストの出入りもありますので、周辺住民に迷惑を及ぼすおそれがあります。(待機している女の子が飛び降りたという話も、、、)
そういった問題が起こるおそれがあるので、物件オーナーは待機所付は嫌うのでハードルが高くなります。
3.風俗営業可能物件について
スナック、キャバクラなどは、風俗営業(法第2条第1項)に分類されます。
世間では、一般的にこの風俗営業には、性風俗特殊営業も含んで呼ばれていますので、混ざって解釈されてることが多いです。デリヘル事務所にも周辺に学校があったら申請できないと間違って解釈されていたりします。
スナックやキャバクラ、麻雀、ゲームセンターに使用する店舗は、オーナーの使用許可+周辺に学校や保育園、病院など保全対象施設と呼ばれる施設がないかを確認する必要があります。
この辺りは、どの不動産屋さんでも知っていることですので、候補の物件が見つかった段階で(必ず、本契約前に)我々風営法専門の行政書士に相談していただければと思います。
不動産屋さんが、風俗営業できると言っていても、新しく保育園が建設されたなどということはありますので、居ぬき物件でも必ず、風営法が申請可能かどうかの現地調査はするようにしてください。
風営法の用途地域については、コチラの記事で詳しく解説しています。
最近出店が多い、アミューズメント(ポーカーバー)などは、オーナーが賭博を心配して使用許可を出してくれないことが多いので、粘り強く交渉してみましょう。
4.深夜営業可能物件について
バーや居酒屋などの深夜営業許可(正しくは、「深夜酒類提供飲食店」)については、風俗営業には当たらないと解釈されています。(法33条)
しかし、騒音問題や酔っ払い客のトラブルが懸念されますので、警察署によっては、深夜営業許可の手続きにもオーナーからの使用許可(使用承諾)が必要な場合がありますので、物件契約時には、必ず、本来の使用用途を伝えて契約するようにしてください。
賃貸契約書の物件の使用目的が本来の使用用途を記載していないと、オーナーからの使用許可が下りないこともあります。
例)深夜飲食店のバー、コンセプトカフェ&バー、ガールズバーなど
また、深夜営業許可については、営業できる地域が限られていますので、その点も注意ください。
住居系の地域では、深夜営業許可の申請は行うことができません。
5.その他の注意点
5-1.勢いだけで申込みをしてはいけない
- ・初めて独立して事業される方
- ・設立したての法人
- ・自己資金が乏しい方
は、物件申込みをしても、保証会社の審査・不動産オーナーの審査で落とされる場合があります。
一度落ちてしまうと、同じ保証会社では審査が通りづらくなることもあります。
上記3点に該当する事業者の方は、不動産担当者とその点を相談した上、慎重に申込みをするようにしてください。
せっかく法人を設立しても、希望の物件の審査が下りず借りられないということも、この業界では何ら珍しいことではありません。
5-2.又貸し契約について
これまでの解説で、風俗営業については、不動産オーナーからの使用許可(使用承諾)が下りるかどうかが大切ということを理解していただけたかと思います。
営業に関しては、不動産オーナーの意向に反してはいけません。
よくある例が、不動産の又貸しです。
賃貸契約書では、Aさんが契約しているにも関わらず、営業者がBさんである場合、不動産オーナーから使用許可の資料を頂く場合に、Bさん名義で書類を作成します。
そのような場合だと、契約違反ということで使用許可が下りないということがあります。必ず、契約名義人と営業者が違う場合は、契約前にその旨の承諾を得た上で契約をしてください。
不動産オーナーからの承諾さえ得られれば、又貸しの賃貸契約であっても、風俗営業の申請は行えますので安心してください。
5-3.本契約前に風営法専門の行政書士に相談
先にも申しましたが、当法人では、年間300件ほどの風営法関連の申請に携わっています。
年間に十数件は、風営法の申請ができないにも関わらず、既に賃貸契約を済ませてしまったという残念なケースがあります。
そういった場合は、経営者の責任になり大きな損害となってしまいますので、風営法の申請を控えている場合は、必ず、本契約前に風営法専門の行政書士に相談してください。
行政書士と言っても、専門業務が幅広いので、必ず、風営法専門の行政書士に相談してください。【地域名+風営法+行政書士】で検索をするといいかと思います。
6.終わりに ~いい不動産会社の見つけ方~
いい物件を見つけるには、風営法に通じた不動産会社(担当者)に巡り合う必要があります。
不動産情報は、全国どの不動産会社でも専用の検索サイトを使っていれば調べることができます。ただし、土地の利を生かしたり、その不動産会社しか持っていない情報というのもあります。
不動産会社に掲載されるサイトに載る前の情報を得るには、
- ・普段から不動産の担当者と懇意にする
- ・建物オーナーや知り合いなどの人脈を使って空き物件の情報アンテナを伸ばす
- ・カラオケなどの業者の情報(既存店の解約情報を活用)
などの方法があり、様々な業者さんと普段から懇意にしている必要があります。
私たち行政書士も飲食店に携わる業者とは普段から懇意にしていますので、物件探しからご相談にのることも多くあります。
お客様からは行政書士事務所なのに物件も探してもらえるんですかと驚いてもらえることもあるのですが、不動産探しが飲食店オープンのスタートですので当たり前のことだと思ってお手伝いさせていただいています。
特別に手数料をいただくということもありませんので、物件探しからお気軽にご相談していただけたらと思います。