風営法の用途地域と保全対象施設|東京の距離制限と物件調査の落とし穴

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コラム

初回公開:2020年6月30日

契約前に用途地域と周辺施設を確認する事業者とアルトくん

1.契約前に調べる。見落としは出店計画を左右する

物件契約を進める前に現地確認・資料照合・警察協議を行う相談場面

「この物件、風営法の許可って取れますか?」

お客様からよく聞かれます。商業地域だから大丈夫。以前も風俗営業のお店だったから大丈夫。そう思っていても、調べてみると意外な問題が出てくることがあります。

例えば、普通の雑居ビルの中に、目立つ看板も出していないサテライト高校が入っていたり。私自身、日が沈んでから現地調査をして、認可保育園を見逃しそうになったこともあります。

用途地域や距離制限を満たさず、例外もなければ、その計画のまま新規許可を取ることはできません。物件を契約し、内装工事を進めてから分かると、支出や開業計画に大きな影響が出ます。

だから私は、こうした調査は物件契約前に済ませておくことをおすすめしています。以前のお店が許可を取っていても、周辺施設、営業の種類、使う区画が変われば、次のお店も取れるとは限りません。

今回は東京都の用途地域と保全対象施設の距離制限について、法律のルールだけでなく、私が現場で経験してきたことも交えてお話しします。

2.万が一に備え、最大2億円の賠償責任保険に加入

調査の責任への備えとして最大2億円の行政書士賠償責任保険に加入。補償には契約上の条件と対象外がある

保全対象施設の調査結果は、お客様の物件契約や内装工事の判断につながります。だからこそ、調査を引き受ける側にも、それに見合う責任と備えが必要だと考えています。

行政書士法人ARUTOの万が一への備え

行政書士賠償責任保険に加入。支払限度額は最大2億円です。

実際の保険金の支払いは、保険契約の補償対象・免責事項・支払要件に基づいて判断されます。すべての損害の補償や、許可取得を保証するものではありません。

制度の概要は、全行団の行政書士賠償責任補償制度の案内でも確認できます。

もちろん、保険に加入していれば調査が簡単になるわけではありません。現地を確認し、必要な資料を照合し、判断の根拠を残す。保険を使うような事態を起こさないための確認が先にあります。

ARUTOでは物件契約前の現地調査についても、業務委託契約書を取り交わし、担当する業務の範囲を明確にして進めています。慎重な調査と万が一への備えを、両方大切にしています。

3.まずは用途地域。商業地域でも安心はできない

用途地域の境界と営業所として使う範囲を地図で確認する場面

キャバクラ、ホストクラブ、麻雀店、許可が必要なポーカーバーなどは、どこでも風俗営業ができるわけではありません。物件調査では、①用途地域と②保全対象施設との距離を確認します。

東京都では、第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域が、原則として風俗営業所の設置を制限する「住居集合地域」です。ただし、第4号・第5号営業には、第二種住居地域・準住居地域の一部について例外があります。商業地域・近隣商業地域に隣接し、そこから20m以下の区域です。

逆に、商業地域なら何も調べなくてよい、という話でもありません。近くの学校や保育所との距離によって、許可を取れないケースがあります。建築基準法上、予定する用途で建物を使用できるかも別問題です。

六本木などは繁華街のすぐ近くに住居系の地域が入り込んでいます。用途地域の境界線が建物にかかる場合、客室だけでなく、営業所として使う範囲を図面で確認する必要があります。私たちも、境界線が問題になり、測量士や建築士と連携した案件を経験しています。

「繁華街だから大丈夫」という思い込みは禁物です。

4.東京の保全対象施設と距離制限

学校の建物だけでなく校庭などを含めた敷地を確認するイメージ
図は考え方を示すイメージです。実際の敷地・営業所の範囲や測定点は個別に確認します。

東京都では学校、図書館、児童福祉施設、病院、入院設備のある診療所などの敷地から、原則100m以内に風俗営業所を設けることが制限されています。ただし商業地域・近隣商業地域には施設の種類に応じた例外があります。

表は左右にスクロールしてご覧いただけます。

施設の種類 商業地域 近隣商業地域
学校(大学を除く)・図書館・児童福祉施設(助産施設を除く) 50m以上 100m超
大学・病院・8~19床の診療所・第一種助産施設 20m以上 50m以上
1~7床の診療所・第二種助産施設 10m以上 20m以上

※特定地域などの例外を除いた基本的な整理です。近隣商業地域の学校等は、100m以内が原則として制限区域です。ちょうど100mも含まれるので「100m以上」とは書けません。表の数字は店舗が所在する用途地域に応じたものです。

ここで見落としやすいのが、施設の「建物」ではなく「敷地」が基準になること。駐車場なども敷地に含まれるか確認します。入口同士を結んだ距離でも、道路を歩く距離でもありません。

5.学校は、学校らしい建物とは限らない

雑居ビルの小さなテナント案内で学校関連施設を見つける現地調査
学習センター等の名称だけで、保全対象施設に該当すると決まるわけではありません。

以前、雑居ビルの中にサテライト高校が入っていたことがありました。派手な広告があるわけでもなく、ぱっと見ただけでは気付けないような施設です。

学校を探すとき、大きな校舎や校庭だけをイメージすると危険です。ビルの入口の案内板や各階のテナント表示まで確認する理由は、こういうところにあります。

しかも、見つけたら終わりではありません。「学校」と名乗っていても、学校教育法第1条の学校なのか、通信制高校の関連施設なのか、実際にどう使われている施設なのかを調べます。保全対象施設に当たるかは、名前だけでは決まりません。

学校に問い合わせても、電話に出た方が設置認可や法的な位置付けまで理解しているとは限りません。必要なら所管する行政機関の資料や説明と照合します。

私たちが扱ったポーカーバーの案件でも、近くのサテライト高校の位置付けが問題になりました。一件で出た判断を、そのまま別の施設に当てはめることはできません。

6.保育園で「認可です」と言われたのに……

施設の説明と自治体の資料を照合する認可区分の確認

保育園の調査でも、忘れられない経験があります。

施設へ直接問い合わせたところ、「認可保育園です」と説明されました。でも、調べると認可保育園ではなかったのです。

もちろん、相手が意図的に間違えたという話ではありません。施設で働く方が、制度上の区分まで正確に把握しているとは限らないのでしょう。

ただ、こちらはその回答をもとに、物件契約に関わる判断をする立場です。だから「電話でそう言われたから大丈夫」とはできません。認可関係の資料や自治体の担当部署で裏付けを取ることが大事です。

また、児童福祉施設には保育所のほか、児童養護施設や児童厚生施設などもあります。公園も一律ではありませんが、児童福祉法上の児童遊園なら対象になり得ます。名称や遊具の有無だけで決めつけないようにしています。

7.現地調査は、日が暮れてからやらない

明るい日中に地図と現地の建物を照合するアルトくんと調査員

私が現地調査で教訓にしていることがあります。保全対象施設の調査は、明るいうちにすること。

以前、日没後に調査して、認可保育園を見逃しそうになりました。Googleマップで見つけられなかったのか、私が見落としていたのかは分かりません。でも、そのときに思ったんです。「暗くなってから、この調査をするのは駄目だな」と。

そして、雨の日もできれば避けたい。傘を差しながら地図を広げると濡れるし、看板を見たり地図に書き込んだりするのもやりづらい。どうしても作業が雑になってしまいます。

地図を見る、現地を歩く、施設の区分を調べる。この三つはそれぞれ役割が違います。現地へ行ったというだけでは、十分に調査したことにはなりません。

これは法律で決まった調査時間や天候の話ではありません。実際に歩いて、見落としかけた経験から得た私自身のルールです。

8.病院・診療所、図書館、建設予定地にも注意

診療所の入院設備、図書館の位置付け、建設予定地を確認するイメージ

近くに「クリニック」があっても、その名前だけでは判断できません。東京都で保全対象になる診療所は、入院設備のある診療所です。商業地域なら8~19床は20m以上、1~7床は10m以上と基準が違います。病院は20床以上の入院設備を有する施設です。

図書館も独立した建物とは限りません。複合施設の一角に入っている場合もあります。「図書室」と書いてあるだけで一律に判断するのではなく、図書館法上の位置付けなどを確認します。

建設予定地にも気を付けます。東京都条例は、学校や病院などの用に供するものと決定した土地も対象施設の敷地に含めています。更地だから安心、とは言えません。ただし、建設予定地なら何でも対象になるわけではなく、何の施設に使うと決定されているかを確認します。

9.距離は水平面で測る。図面にも根拠が必要

営業所と施設敷地の距離を高さを足さず水平面で確認する模式図
図は考え方を示すイメージです。実際の敷地・営業所の範囲や測定点は個別に確認します。

「お店はビルの10階だから、1階の施設からは離れているでしょう」と考える方もいるかもしれません。でも距離は、原則として水平面で測ります。高さを足すわけではありません。

私たちは住宅地図などを使い、用途地域と周辺の施設を確認し、営業所周辺略図に整理します。10m、20m、50m、100mの線を描いても、それだけでは調査は終わりません。

施設の敷地はどこまでか。営業所として使う区画はどこか。境界が微妙なら測量などが必要か。判断に迷うときは、調べた資料をそろえて管轄警察署とも協議します。

大切なのは「たぶん大丈夫」で済ませず、そう判断した理由を説明できることです。

10.距離制限の特例がある「特定地域」

町名だけでなく指定区域と用途地域を照合する特定地域の確認

東京都では、次の区域のうち商業地域・近隣商業地域に該当する部分について、保全対象施設との距離制限の例外が設けられています。

表は左右にスクロールしてご覧いただけます。

区 指定区域
中央区 銀座4~8丁目
港区 新橋2~4丁目
新宿区 歌舞伎町1丁目、2丁目の9・10・19~46番、新宿3丁目
渋谷区 道玄坂1丁目の1~18番、2丁目の1~10番、桜丘町15・16番

歌舞伎町や道玄坂なら全部同じ、というわけではありません。また、特定地域だからほかの許可要件を調べなくていいわけでもありません。

午前1時までの営業を認める「営業延長許容地域」は、これとは別の制度です。特定遊興飲食店営業にも別の場所的要件があります。混同しないようにしましょう。

11.物件の契約前からご相談ください

保全対象施設の調査は、地図に円を描くだけの仕事ではありません。経験を重ねているからこそ、慣れで判断せず、現場を確認して根拠を残す。そこを大事にしていきたいと思っています。

行政書士法人ARUTOでは、物件契約前の用途地域・保全対象施設の調査からご相談をお受けしています。開業予定の物件で迷っている方は、物件契約前の調査についてご相談ください。

東京都の基本的な距離制限は東京都条例第3条、距離の例外は東京都公安委員会規則第1条・第2条、特定地域の番地は公安委員会告示第33号を確認しています。距離の測り方:警察庁の解釈運用基準 第12・9(PDF36ページ)。

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