目次
- 1.法人成りの検討
- 1-1.風俗営業許可は取り直しが必要
- 1-2.再度許可が下りるまで費用と時間がかかる
- 2.法人化手続きの流れ
- 2-1.保健所で飲食店営業許可を法人に切り替え
- 2-2.警察署で法人成りの手続き
- 3.法人化・個人経営それぞれのメリット
- 3-1.風営法に関する法人化のメリット
- 3-2.風営法に関する個人経営のメリット
- 4.個人事業主が法人化する最適なタイミングは?
- 4-1.節税効果が大きくなるとき
- 4-2.事業拡大を考えるとき
- 4-3.従業員数を増やそうとするとき
- 5.まとめ
1.法人成りの検討
2023年10月インボイス制度が開始され、これまで2年間あった消費税の免税期間の優遇期間もつかいづらくなってしまいました。
個人経営でガールズバーやキャバクラの営業を始め、お店が軌道に乗ってきた段階で法人化(法人成り)を検討する方もみえるでしょう。
すでに風俗営業や深夜酒類提供飲食店営業の店舗であった場合、どちらも名義変更することができず、法人設立後に新規で手続きをしなければなりません。
当記事では、ガールズバーやキャバクラを法人成りする流れやメリット、適切なタイミングについて解説します。
ケースによっては大変な手間と時間のロスが発生してしまうため、事前にしっかりと内容を把握しておきましょう。
1-1.風俗営業許可は取り直しが必要
原則、名義変更はできない。
冒頭にも述べたとおり、個人経営時の風俗営業許可や深夜酒類提供飲食営業許可は名義変更ができません。そのため、店舗や営業内容がまったく同じでも、法人成りをしたら新規に許可を取り直す必要があります。
最初は個人でスタートし、後に法人に切り替えようと安易に考えている場合には注意が必要です。
さらに、飲食店営業許可についても同じく名義変更できません。
どちらも人と場所に対する許可であるために、法人成りや管理者の変更で名義が変わる際には、原則は一度廃業届を出したうえで新しい名義での申請を行う必要があるのです。
※風営法については地域によって、法人成りのルールが違うので確認が必要です。東京都の場合、法人成りのケースでは引き続いての営業が認められています。
1-2.再度許可が下りるまで費用と時間がかかる
新しく風営法関連の許可、飲食店営業許可の申請を行おうとするときは、当初と同じく審査や実地検査があるために一定の期間を要します。また、会社設立のための準備期間も考慮すれば、法人成りから新たな許可を得るまでは相当な手間と時間がかかることが想定されるでしょう。
ただし店舗の営業自体は、法人として風営法の許可が出るまでの期間中でも続けてもいいことが特例で認められています。
各種申請の内容や図面が個人経営時と変わっている場合には適宜訂正を加え、現状がきちんと法規制に則した内容であるかを細かくチェックしましょう。
2.法人化手続きの流れ
前述のとおり、ガールズバーやキャバクラで法人成りをする場合には「風俗営業許可」、「飲食店営業許可」の両方で手続きをする必要があります。
順番を追って手続きの流れを見ていきましょう。
2-1.保健所で飲食店営業許可を法人に切り替え
飲食店営業許可を法人に切り替えるためには、当初の申請と同じくまず保健所で手続きを進めます。
通常通り飲食店営業許可の申請をして、所轄の担当者に検査を行ってもらい、設備等に問題がなければ以後一週間程度で許可を受けられます。
その際注意すべき点として、令和3年6月以降の食品衛生法改正が挙げられます。
改正では一部緩和されている基準もあるのですが、従業員用手洗いについての基準が厳しくなっている点に注意が必要です。「従業員用手洗いはレバー式や自動洗浄式でなければならない」という条件が新たに記され、レバー式でも手指を汚さないよう肘などで操作できることが求められます。
許可書が発行され保健所に取りに行く際は、個人経営時の飲食店営業許可書と個人事業主の廃業届を一緒に持っていき提示しましょう。
2-2.警察署で法人成りの手続き
保健所での手続きが完了したら、今度は警察署へ行き風俗営業許可についての法人化手続きを進めます。
管轄の警察署の対応にもよりますが、個人経営時の廃業届(または返納理由書)が事前に提出されていないと新規に受け付けてもらえないケースもあります。
↓法人化手続き前に提出が必要な書類↓
・深夜酒類提供飲食店営業の場合…廃業届
・風俗営業許可の場合…返納理由書、風俗営業許可証、風俗営業管理者証
一般的には上記の内容で提出を求められますが、管轄の警察署へ事前に確認が必要です。
その後は当初の申請と同じく申請・届出を進めます。ただし、以下の書類は法人申請時に必要な書類となるので用意しておきましょう。
↓風営法で法人申請時に追加で必要な書類↓
・法人の履歴事項全部証明書
・定款の写し
・役員の住民票
・役員の身分証明書(風俗営業許可申請の場合のみ)
深夜酒類提供飲食店営業の場合は届出10日後から、風俗営業許可の場合は約55日(土日祝日を除く)で営業可能となります。
3.法人化・個人経営それぞれのメリット
3-1.風営法に関する法人化のメリット
- ・社会的信用度が高まる
- ・公的資金や銀行融資が受けやすくなる
- ・節税対策になる
- ・無限責任から有限責任にできる
- ・営業の譲渡(売買)がしやすい
会社を設立して風俗営業店や深夜酒類提供飲食店を経営すれば、個人と比較して社会的な信用度が高まるため、契約や取引を行う際は有利と言われています。
そして、公的機関からの給付金や支援金、銀行融資に対しても同じことが言え、法人であることで何倍もの資金調達が可能になるケースも少なくありません。
さらに、個人事業の法人税は累進課税が採用されているために、所得に比例して税率が上がり最高では45%となります。一方、法人にかかる法人税は最高でも23.4%ですから、事業規模拡大を目指すのであれば節税対策として法人成りがおすすめです。
また、会社の責務に対する責任範囲が無限責任から有限責任となるため、会社の借入金や滞納している税金などにおいては、出資金の範囲内での責任にできます。
個人からの名義変更とは異なり、会社を譲渡または売買することで風営法関連の許可を引き継ぎやすい点もメリットと言えるでしょう。
参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」/「No.5759 法人税の税率」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/index.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
3-2.風営法に関する個人経営のメリット
- ・開業の手間が少ない
- ・開業にかかる初期費用は少なく済む
- ・事務負担が少なく税務処理が簡単
個人事業主のメリットは、何と言っても開業手続きが簡単なことです。税務署等に対して開業届を提出するだけで手続きが完了し、その際の費用負担もありません。
会社を設立する場合には、定款作成や登記のために期間や手間がかかり、登録免許税などの初期費用も必要です。社会保険加入の義務がない点もメリットと言えるでしょう。
さらに個人事業の場合には、経理などの事務負担が圧倒的に少なく済みます。会社を設立すると従業員に対しての給与支払いが生じるため、所得税の計算や源泉徴収などが必要となります。健康保険の加入義務もあるため、大きな事務負担となるでしょう。
ただし、前述の通り個人事業主から法人成りする際には風営法上の注意が必要です。当初から事業拡大を想定するのであれば、会社を設立したうえでの開業が賢明ではないでしょうか。
4.個人事業主が法人化する最適なタイミングは?
4-1.節税効果が大きくなるとき
個人経営から法人成りをする最適なタイミングとして「売上が1,000万円を超えたとき」「所得金額が800万円を超えたとき」が挙げられます。
個人事業主で売上1,000万円を超えてしまうと翌々年度から消費税の支払い義務が生じてしまいますが、法人成りをすることで最大2年間消費税の免除を受けられましたが、インボイス制度の開始により、この恩恵はあまり感じられなくなるでしょう。
また、個人事業主も法人も税率に段階が設けられていますが、個人事業主の課税所得が800万円以上になると、法人の税率を上回ります。そのため、800~900万円頃で法人成りすれば節税のメリットが得られるというわけです。
4-2.事業拡大を考えるとき
事業の拡大や新規事業を行おうとする場合には、多額の資金調達の必要が生じるでしょう。
取引先によっては、個人事業主との取引を嫌煙したり、取引口座を作ってくれなかったりというケースもあります。しかし、法人成りすれば社会的信用度のアップによってこのような制約を受けることがなくなり、取引先の拡大をしやすくなります。
4-3.従業員数を増やそうとするとき
売上げや業務量が増えて、従業員を増やす必要性を感じた時も法人成りのチャンスです。
会社が成長してマンパワーが不足してきたときには、それを補うために社員やパートの採用が必要となりますが、法人成りをすることにより雇用体制が整い人材を集めやすくなります。
ただし、法人成りをした場合には、従業員の社会保険・厚生年金費用の一部や、福利厚生費などの負担が生じます。売上と経費のバランスを考え増員を検討する必要があるでしょう。
5.まとめ
ガールズバーやキャバクラを個人経営から法人に切り替える場合は、通常の申請・届出よりも手続きが複雑化します。
一度風俗営業の申請手続きを踏んだ方でも、法人成りの手続きと共にそれらを再度進めていくのは簡単な事ではありません。
できる限り早くスムーズに法人成りを進めて経営を拡大していきたいと考える場合には、風営法を得意とする行政書士への相談がおすすめです。
ナイトビジネスに特化した行政書士事務所ARUTOでは、首都圏を中心に年間300件以上の申請に携わり、あらゆる内容のご依頼に対応してまいりました。
風俗営業の法人化をご検討の方は、当事務所までお気軽にご相談ください。