目次
- 1.はじめに|飲食店は法人化すべき?タイミングは?
- 2.個人経営の飲食店を法人化するメリット
- 2-1.節税対策になる
- 2-2.信用力がアップする
- 2-3.社会保険に加入できる
- 3.法人成りで注意すべき登記手続きのポイント
- 4.登記(設立)後に必要な手続きとは?
- 4-1.役所(保健所・警察など)での変更手続き
- 4-2.金融機関での変更手続き
- 4-3.クレジットカード・口座開設
- 4-4.労務関連(ハローワーク・社会保険など)の手続き
- 5.まとめ|飲食店の法人化は専門家に相談を

1.はじめに|飲食店は法人化すべき?タイミングは?
個人で飲食店を経営していると、軌道に乗り始めた頃に「法人化した方がいいのでは?」と考えるタイミングが訪れます。
ただ、法人化は勢いで決めるものではなく、事業規模・利益・雇用状況などを冷静に見極めることが大切。
例えば、年間の利益が500万円を超える頃や、スタッフを常時2人以上雇うようになった段階がひとつの目安と言われています。
また、「2店舗目の出店を検討している」「取引先や仕入れ先との契約金額が増えてきた」、そんなときも法人化の検討時期と言えます。
法人化は、単なる形式変更ではなく、「事業を次のステージに引き上げるための仕組みづくり」です。
この記事では、実際に現場でよくある事例を交えながら、飲食店が法人化する主なメリットと、登記手続きで押さえておきたいポイントを解説していきます。
法人化すべきどうかお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
2.個人経営の飲食店を法人化するメリット

飲食業は売上の波が大きく、お金の出入りも多い業種。だからこそ、税金対策・信用・雇用の安定といった面で、法人化による恩恵は大きくなります。
2-1.節税対策になる
飲食店を法人化する最大のメリットは、節税効果です。
個人事業主の場合、所得が増えるほど税率が上がる「累進課税」ですが、法人は一定の法人税率(中小企業で約23%)で頭打ち。
利益が大きくなるほど、法人化による節税効果が高まります。
さらに、法人では「自分への給与=役員報酬」を経費にでき、家族を役員にして報酬を分散させることも可能です。
例えば、夫婦で経営している居酒屋で、奥様を役員にして給与を支給すれば、世帯全体での税負担を軽減できます。
また、店舗運営に必要な車両・通信費・保険料なども会社経費として計上できる範囲が広がり、お金の流れを整理しながら節税につなげられます。
「節税」というよりも、経営の数字を可視化して「コントロールしやすくする仕組み」をつくる、それが法人化の実務的な意義といえるでしょう。
2-2.信用力がアップする
テナント契約・仕入れ先・金融機関など、飲食業では「信用」が何よりの資産。
法人格を持つことで、契約や融資の場面での信頼度が格段に上がります。
例えば新店舗のテナントを借りる際、法人名義で契約できればオーナーや不動産会社の信頼を得やすいメリットが。
銀行からの融資審査でも「法人格あり」は明確なプラス評価になります。
また求人活動においても、「法人経営の飲食店=安定して働ける職場」と見なされることが多く、人材確保のしやすさにも直結します。
経営者としても、個人名義ではなく会社名義で契約を重ねることで、トラブル時の責任範囲を明確にし、リスクを分散できる点も見逃せません。
2-3.社会保険に加入できる
法人化すると、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務になります。
「保険料負担が増える」とネガティブに捉えがちですが、実際は経営・採用の両面で大きなメリットがあります。
従業員にとって社会保険完備は安心感につながり、求人応募の数も増えやすくなるでしょう。
さらに経営者自身も厚生年金に加入でき、将来的な受給額が増えるなど、長期的なリターンがあります。
福利厚生を整えることで、スタッフの定着率も上がり、結果的に人件費や教育コストの削減にもつながるのです。
私も参考にさせて視聴しているYouTubeの脱・税理士スガワラくんで分かりやすく説明されてますので参考にしてください。
3.法人成りで注意すべき登記手続きのポイント

法人化は書類上の手続きだけでなく、物件契約や融資、税務・労務の整合性を取ることが重要です。
「登記はしたけど契約が追いつかない」「銀行に再審査を求められた」といったトラブルも少なくありません。法人成りを進める際のポイントをチェックしておきましょう。
3-1.テナント物件を登記場所にする際の注意点
飲食店では、「店舗(テナント)をそのまま本店所在地として登記したい」というケースがよくあります。
ただし、賃貸借契約書に“登記禁止”の条項がある場合、オーナーの承諾なしに登記すると契約違反になるおそれが。実際には「相談すれば許可してもらえる」ケースも多いため、必ず登記前にオーナーの承諾を得ておきましょう。
もし承諾が得られない場合は、自宅を登記上の本店とし、店舗を「営業所」扱いにするのが安全です。見た目の違いはほぼなく、法的にも問題ありません。
※自宅を登記上の本店にする場合、賃貸物件であればオーナーの許可が必要です。黙って本店登記すると解約事由になることもあるので注意してください。
3-2.銀行で融資を受けている場合の注意点
個人名義で融資を受けている場合、法人化に伴って契約の名義変更が必要になります。
この際、銀行によっては新たな審査を求められ、条件が変わることも。
特に運転資金や設備資金で借入中の方は、法人化前に必ず金融機関へ相談しましょう。無断で法人化すると融資契約の規約違反となり、最悪の場合、一括返済を求められる可能性もあります。
なお、法人化を機に新しい事業計画書や損益見込みを提出すると、融資枠の拡大につながるケースもあります。
3-3.必ず税理士に相談を!
法人化=節税、というイメージが強いですが、実務では逆に税負担が増えることもあります。
社会保険料の負担、顧問料、会計ソフトなど、見えないコストが積み上がるためです。
そのため、法人化を決める前には専門家と連携してシミュレーションを行うのがおすすめ。
行政書士・司法書士で登記・契約関係を整え、税理士が会計・税務を、社労士が労務を担当する、この連携体制が取れている事務所なら、設立後の運営までスムーズに進められます。
法人化すると税務処理も複雑になり困難になりますので、個人事業主としては自身で確定申告をしていたけども、顧問税理士と契約するのも法人化するタイミングが多いです。
4.登記(設立)後に必要な手続きとは?

登記が終わっても、やるべき手続きは山ほどあります。
「設立届は出したけど他はまだ」というケースも多いですが、後回しにすると行政・金融・労務で支障をきたすことも。
法人化直後はやることが多く混乱しやすいので、行政書士・社労士のサポートを受けながら進めるのがおすすめです。
4-1.役所(保健所・警察など)での変更手続き
飲食業では営業許可を保健所に届け出ています。法人化したら、まず営業許可証の名義変更を行いましょう。
風俗営業や深夜酒類提供飲食店の場合は、警察署への変更届も必要です。
この手続きが完了していないと、銀行など他の機関での手続きが進められません。
※飲食店営業許可では容易に変更手続きできるようになりましたので、下記のサイトを参考にしてください。
4-2.金融機関での変更手続き
次に、銀行へ法人設立の旨を報告し、口座名義や融資契約の変更を行います。
必要書類は登記簿謄本・印鑑証明・定款など。
個人時代の口座を使い続けると会計が複雑化するため、法人専用口座を新設し、取引をすべて切り替えましょう。経理の透明性がアップし、税務署からの信頼も得やすくなります。
4-3.クレジットカード・口座開設
仕入れや備品購入に法人カードを導入しておくと、経費処理が圧倒的にラクになります。
個人資金と会社資金を明確に分けられるため、経営数字のブレが減り、決算書の信頼性も向上します。
銀行手続きが終わってからでないと申請を受け付けてもらえないため、②完了後に行うのが鉄則です。
4-4.労務関連(ハローワーク・社会保険など)の手続き
従業員がいる場合は、雇用保険・社会保険の新規加入手続きを行います。
給与支払報告書や源泉徴収票など、提出書類も多いため、専門家に依頼して確実に進めましょう。
なお、雇用保険や社会保険の手続きには提出期限があり、原則「法人設立日(または雇用発生日)から5日以内」とされています。この期間を過ぎると遡及手続きが必要になり、保険料の算定が複雑になることもあるため注意が必要です。
5.まとめ|飲食店の法人化は専門家に相談を

飲食店の法人化は、節税や信用力アップ、人材確保など多くのメリットがあります。
一方で、オーナーへの確認不足や銀行報告漏れなど、ちょっとした手続きミスが大きなトラブルにつながることも。さらに、登記前後の手続きには専門知識が求められます。
専門家の力を借りながら進めれば、手続きをスムーズに、そして確実に進めることができます。
早めの段階から相談し、ぜひ最短ルートでの法人化を目指してくださいね。
ナイトビジネス専門の行政書士法人ARUTOでは、キャバクラやバー、居酒屋などの飲食店の法人設立・許認可申請をこれまでに数多くサポートしてまいりました。
税理士・社労士とも連携し、登記から税務・労務までワンストップでの対応が可能です。
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