1.日本在住のベトナム人の推移について
日本で働く外国人労働者は年々増加しており、令和4年10月末時点で約182万人と過去最高を記録しました。中でもベトナム人が約46万人と最も多く、全体の4分の1を占めます。
そのような状況下で「ベトナムパブ」の出店もまた急増しています。しかし、無許可営業や留学生をキャストとし採用するといった問題のある店が多いのも事実です。
今回は、ベトナムパブの営業に必要な許可申請やビザ(在留資格)について解説します。営業に関わろうとする際はぜひ当コラムを参考にしてください。
参考:厚生労働省『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)』
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30367.html
ベトナムパブの営業に必要な許可とは
必要な許可は主に2つ
ベトナムパブはキャストが客の横に座り、談笑したりお酌をしたりする「接待行為」が行われる飲食店です。
そのため、ベトナムパブの営業に必要な許可は以下の2つ。
- 飲食店営業許可
- 風営法1号営業許可
店内で酒類を含む飲食が行われる場合には飲食店営業許可の申請は必須です。
さらに、接待行為が伴う場合には風営法の規制を受けるため、1号許可と呼ばれる「社交飲食店」の許可を申請しなければなりません。
「深夜営業許可」でもいい?
酒類をメインとして提供する飲食店が、「深夜酒類提供飲食店営業」の届出をしてベトナムパブとして営業するケースもあります。深夜酒類提供飲食店営業、いわゆる深夜営業許可は風営法の一種ですが「届出」で済むため、1号営業許可の申請に比べ許可を取得しやすいという背景があるのでしょう。
しかし、深夜営業許可において接待行為は認められません。
確かに、キャストがカウンター越しなどで世間話程度の接客を行うような業態であればグレーゾーンとして認められる場合もあります。ただし、席数に対しキャスト数が多い、客とカラオケでデュエットしているといった事実が認められれば、接待行為が存在すると指摘される可能性は高まります。
ベトナムパブと聞いて客が想定するサービス内容は、多くが接待行為を期待するものでしょう。健全な営業を目指すならば、飲食店営業許可と風営法1号営業許可の申請を検討するべきです。
違反した場合の罰則
深夜営業許可と風俗営業許可は同時に取得できないため、どちらかを選択することになります。前述のように深夜営業許可で接待行為が発覚した場合には、無許可営業と判断され厳しい罰則を受けます。
風営法違反での罰則は「2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、又はこれらの併科」となり、逮捕された場合にはその後5年間にわたり新たな許可申請の資格も無くなります。
さらに、外国人の場合は在留資格にも影響が出る可能性が高くなる点に注意が必要です。
ベトナムパブ許可申請における要件
ベトナムパブの風俗営業許可の申請にあたっては、次にあげる4つの要件をクリアすることが必要です。くわしく見ていきましょう。
人に関する要件
申請者は、風営法で規定される「人的欠落事由」に該当する場合には営業者・管理者になることができません。
人的欠落事由の具体的な内容としては以下のような内容が挙げられます。
- ・心身の故障により業務を適切に実施できない人
- ・破産者で復権を得ない人
- ・1年以上の懲役又は禁錮刑に処されて5年が経過していない人
- ・暴力行為を行う恐れのある人
- ・アルコールや薬物の中毒者
- ・風営法違反による許可取消処分を受け5年未満の人
- ・未成年者
- ・法人の場合で役員が上記に該当する場合
営業場所における要件
風俗営業許可が取れる場所は明確に限定されています。
風営法における「場所的要件」では、都市計画法の用途地域と営業者周辺の保全対象施設の有無が関係し、物件契約の前に細かく調査することが大切です。
前テナントが許可をとっていたと聞いても注意が必要。営業内容が違ったり、保全対象施設に新たに増えていたりする可能性もあります。
店のつくりや設備についての要件
人と場所の要件をクリアしたら、店舗のつくりや設備についての要件をチェックしましょう。
風営法では許可の種類ごとに内装や設備・什器の要件が定められています。ベトナムパブが対象となる1号営業では「客室の床面積が1室16.5㎡以上」や「客室の内部に見通しを妨げる設備を設けない」、「照度5ルクス以上」といった内容が盛り込まれています。
風俗営業許可申請は現地での検査も行われるため、申請書通りの内容に内装工事を仕上げることがとても重要です。
申請者のビザについての要件
申請者が日本人であれば人的要件を満たせば問題ありませんが、外国人のケースではさらに考慮すべき問題があります。
外国人が風俗営業の営業者になる場合には、下記いずれかの在留資格を取得していなければなりません。
- ・永住者
- ・日本人の配偶者等
- ・永住者の配偶者等
- ・定住者
上記はいずれも活動制限のない身分に基づく在留資格であり、極めて限られている点に注意が必要です。
2.ベトナムパブとビザについて
営業者の在留資格
風俗営業許可を受けたうえでベトナムパブを営業するには、営業者は申請者と同じく以下の在留資格が必要です。申請者=営業者である場合はその限りではありませんが、在留カードに「就労制限なし」の記載があることを確認しましょう。
・永住者
・日本人の配偶者等
・永住者の配偶者等
・定住者
スタッフ(キャスト)の在留資格
ベトナムパブで働くスタッフについても、営業者と同様の在留資格が求められます。
なかには、興行ビザで滞在しながらベトナムパブで働く方も多く見受けられますが、キャバ嬢やホステスのような業務は認められていません。ましてや留学生などは就労自体が認められていないため、キャストへの採用は言語道断です。
必要な在留資格を要しない外国人を雇用した際には、営業者は出国管理法で定める「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。該当したものについては「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科」という、無許可営業よりも重い罰則に処されます。
スタッフが不法就労者であることを知らなくても、在留カードの確認をしていない等の過失がある場合は処罰の対象となる点に注意が必要です。
3.まとめ
今回は、飲食店営業許可と風営法1号営業許可の申請が必要なベトナムパブに焦点を当てて解説しました。
ベトナムパブといっても、許可申請は基本的にキャバクラやスナックなどと同じ手続き内容です。ただし、経営者やスタッフが外国人である場合には在留資格などの問題が追加されるため、より注意深く申請を進める必要があります。
風俗営業の許可申請は一般的に日本人でも独自に完了するのは難しいものです。外国人が日本で健全に営業していくには、開業エリアから営業内容まで気軽に相談できる行政書士とつながっておくことは必須といえるでしょう。
当事務所では、風俗営業に特化したビジネス関連の申請に年間300件以上携わり、外国人経営者様のご依頼も数多くお受けしています。
ご相談は無料です。ぜひお気軽にお問い合わせください。