風営法における名義貸しのリスク|実例や対策を紹介

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コラム

目次

1.「名義貸し」とは

風営法では申請者と経営者が同一人物であることが大前提ですが、実際には「名義貸し」を疑うようなケースが少なくありません。

さまざまな事情が背景にあるのだと推測されますが、名義貸しは風営法違反として摘発につながる可能性が大いにあり得ます。

当記事では、風俗営業での名義貸しの実例やリスク、名義貸しを避けるための対策を紹介します。ナイトビジネスを行う上ではとても身近なテーマですので、しっかりと理解を深めましょう。

 

1‐1.風営法の名義貸し

名義貸しとは、本来は当事者でないにもかかわらず、他人から依頼されて自分の名義により契約・申請など行うことをいいます。

風営法第十一条(名義貸しの禁止)では「第三条第一項の許可を受けた者は、自己の名義をもつて、他人に風俗営業を営ませてはならない」と記載され、名義貸しを明確に禁止しています。

 

例えば、経営において下記のような内容を申請者以外が行っていれば、名義貸しとみなされる可能性があるのではないかと疑われます。

  • ・重要事項の決定
  • ・売上等の金銭管理
  • ・従業員採用の決定
  • ・利益の帰属主体

 

1―2.名義貸しのリスク

名義を貸すことのメリットを考えた場合、第一に金銭の授受が挙げられます。「代わりに許可を取ってくれれば何もしなくても毎月1万払う」と言われれば、とてもおいしい話のように聞こえる人は多いでしょう。また、親しい間柄や恩義・負い目のある人物に頼まれ、やむを得ず名義を貸す羽目になるケースもあるかもしれません。

しかし、何らかの理由で名義貸しを行った場合、実質的に経営に関わっていないとしても、営業に関する責任はすべて名義上の申請者または契約者が負うことになります。

さらに、風営法違反として「2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又はこれの併科」という重い罰則を科される可能性が高まります。

しかも名義貸しの場合、名義を借りていた実質の経営者も「無許可営業」として罰則が適用されるのです。

加えて、風俗営業許可の取り消しや営業停止処分を受けることとなり、人的欠格事由にあたってしまい数年間は再度申請も受理されないため、再起不能な状態に陥ってしまいます。

名義貸しは、わずかなメリットに対し、非常に重いリスクがあると考えられるでしょう。

 

1-3.名義貸しはバレる?

実質の経営者と申請者が異なるという内容の名義貸しは、綿密な調査を行わない限り簡単には露見しないように思えます。スタッフでも経営の実情を把握していないケースが多いでしょう。

実際の事例にも、風営法での名義貸しによる摘発・逮捕というニュースはあまり聞かれません。

売上が巨大になったグループや、無許可営業による摘発の捜査線上で名義貸しが発覚するケースが多いです。

しかし、名義貸しが行われているかどうかは申請者(名義貸しをした人)を調査すれば簡単にわかります。経営者であるはずがお金の流れを分かっていない、店のことを把握しておらず何となく他人事、こんな人物であれば、名義貸しを疑われる可能性は大いにあり得ます。

些細なほころびから、バレるときは簡単にばれてしまうもの。決して警察を侮ってはいけません。

 

 

2.名義貸しの具体的なパターン

実際にはどんな理由で名義貸しが行われるのでしょうか?具体例を見ていきましょう。

 

2-1.ケース① 不動産契約上の理由

「経営者Aさんは不動産契約ができないため、Bさんに依頼した」

 

上記のパターンでは、Aさんは何らかの理由で不動産契約を履行できないためBさんが代わりに行い、Aさんは経営者として風俗営業許可を取ろうとしているケースです。

風営法関係の手続きでは、物件の「使用承諾書」というものを求められます。これは、不動産オーナーが使用者(営業許可の名義人)に対して、風俗営業などをこのテナントで行ってもいいですよという承諾書です。

名義が異なると、オーナーや管理会社から使用承諾をもらうことができないケースがあり、事前にその旨を確実に申告して物件契約する必要があります。

理由次第では「名義貸し」とみなされるため注意が必要です。

不動産オーナーから使用承諾をもらうことができないからと言って、「使用承諾書」を捏造すると、バレてしまった場合は、不動産契約の違約にも該当しますし、刑法の私文書偽造にも該当します。

 

2-2.ケース② 税務調査上の理由

「経営者Aさんは税務調査をされたくないため、Bさんの名義を借りた」

 

Aさんは納税や帳簿の内容に思うところがあり、申請者および管理者としてBさんの名義を借りた、というケースです。

風俗営業店は法人税・所得税(源泉所得税)・住民税・事業税・消費税などあらゆる税制上の法律が絡んできます。特に税務調査が入りやすい業種ともいえ、税務関係をないがしろにせず、開業時から的確に処理していくことが求められます。

そんな背景において、税務上の不安がある人物はそもそも風俗営業を行うに値しないと言えます。名義貸しが発覚した際は両者の身辺調査により、結果として付帯税などペナルティを課されることになります。

 

2-3.ケース③ 共同経営者による理由

「共同経営者であるため、単にBさんが賃貸契約、風俗営業の申請をAさんが行った」

 

金銭の授受や人的欠落の要件など悪質な意図があるわけではなく、単純にAさんとBさんが共同経営者として責任を分担していたケースです。

両者が親族関係にある場合にも多く、母娘でスナックを経営しているパターンなどもあるでしょう。このようなケースでは両者とも実際に経営に携わっているとみなされ、風営法違反として問題になることはほとんどありません。

しかし、ケース①で伝えたように、賃貸物件のオーナーによる「使用承諾書」名義と風俗営業の申請者名義が異なる場合には注意が必要で、事前の確認が重要になります。

 

 

3.名義貸しを避けるための対策

「飲食店営業」や「深酒営業」で手続きする

風俗営業許可の申請には申請者の資質を判断するための「人的要件」がありますが、「飲食店営業許可のみ」または「飲食店営業許可+深夜営業許可(深夜酒類提供飲食店営業)」であれば、それがありません。

そのため、刑務所から出てきたばかり、という方でも申請・届出が可能です。

人的要件により一定の期間申請者になれないという場合であれば、その間は上記の業態で我慢し、期間が明けてから風俗営業を申請するのが望ましいでしょう。

 

営業管理に注意する

意図的に名義貸しを行わなかったとしても、申請者以外に経営の裁量を委ねるような行為があれば名義貸しとみなされてしまいます。

また、自身の責任負担を軽くするため名義人を別の人にしたいと考えている場合には、完全に名義貸しに該当してしまうでしょう。

経営者になるのであれば責任はつきもので、営業に関わる決定は自身で行うべきです。

共同経営者にしても分担の内容を明らかにし、名義貸しと判断されるような行動は避け、営業管理に十分注意することが必要です。

 

 

4.まとめ

名義貸しは、一見して簡単に経営者になれるメリットがあるように思えますが、あらゆるリスクと重大な責任が伴います。

名義貸しが発覚すれば風営法違反として人的要件を欠き、次回の申請も容易には行えなくなってしまいます。

意図せずとも名義貸しに陥るリスクは潜んでいるため、風俗営業の申請時から経営時にいたるまで営業管理を申請者自身がしっかりと行っていくことが大切です。

 

当事務所では、風俗営業に特化した申請に年間300件以上携わる実績から、さまざまなパターンにおける最適なご提案をいたします。

ご相談は無料です。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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