目次
- 1.はじめに
- 2.国内で行うアダルト動画配信業は風営法の届出が必須!
- 2-1.海外サーバーであっても届出は必要
- 2-2.AI動画生成・アニメーション動画の配信でも届出は必要
- 2-3.届出方法と必要書類
- 3.そもそも何が「アダルト動画配信業」に含まれるのか?
- 3-1.有料アダルト動画サイトやアダルトライブチャット
- 3-2.風営法の届出が必要ないものは?
- 4.海外・国内サイトのアダルトコンテンツ内容の違い
- 4-1.モザイクの有無(性器無修正)
- 4-2.日本人AV女優と作品の数
- 4-3.ダウンロード制限
- 5.まとめ|アダルト動画配信は風営法の届出をお忘れなく
1.はじめに
感染症拡大をきっかけとした在宅ワークの拡大を背景に、アダルト動画配信業を行う人が急増しました。チャットライブなどは女性でも配信を始めやすく、アダルト動画配信流行の一端を担っています。
アダルト動画配信業を営むには、風営法で定められた手続きを踏むことが必要です。当事務所では「海外運営サイトを利用すれば手続きが必要ないのか」という問い合わせを多く受けますが、国内で営業する限り届出をすることは必須です。無届で運営した場合、風営法違反で取り締まりの対象となることもあります。
ただし、国内外の運営では展開できるコンテンツの内容に違いがあるため、把握しておけばご自身の運営内容にマッチしたサイト選びができるでしょう。
この記事では、アダルト動画配信業をスムーズに運営するためのポイントを解説します。アダルトサイトを運営する方、ライブチャット配信・AI動画生成・アニメーション動画配信などを行う方は、ぜひお読みください。
2.国内で行うアダルト動画配信業は風営法の届出が必須!
2-1.海外サーバーであっても届出は必要
アダルト動画配信やアダルトライブチャットなどを運営し利益を得る業態は、風営法上の「映像送信型性風俗特殊営業」に該当し、管轄の警察署へ届出なければなりません。通常は営業開始前の10日前までに届出、正しく届出がなされた10日以上経過後に営業開始できます。
国内に事務所を設定する限り風営法上の届出は必須となるため、使用するサーバーやサイトが例え海外のものであっても無届営業はできません。
2-2.AI動画生成・アニメーション動画の配信でも届出は必要
生身の人間以外が主体となって配信するような、例えば、AI動画・同人動画やアニメーション動画の場合でも、受信者側が性的好奇心を感じるような動画配信を行い、事業として利益を得る目的でインターネット回線を介して配信する場合は、上記と同様に風営法の手続きが必要です。
2-3.届出方法と必要書類
映像送信型性風俗特殊営業の届出は、事務所の所在地を管轄する警察署の生活安全課にて手続きします。
届出にあたっては事務所の設置が必要で、賃貸物件を利用する場合ではオーナーによる「使用承諾書」の添付も求められます。
キャバクラやスナック、麻雀店などが該当する風俗営業の許可申請ほどに複雑な手間は必要としませんが、業態の特性上オーナーによっては使用承諾を下ろしてくれないケースも少なくありません。その際に別の人物の賃貸物件で届出を履行することは「名義貸し」として重い罪に問われてしまうため、必ず経営者自身が契約者となっている物件を事務所として届出することが重要です。
【必要書類】
- ・営業開始届出書
- ・事務所の使用について権原を有することを疎明する書類(登記簿謄本、使用承諾書、賃貸借契約書の写しなど)
- ・事務所の略図、平面図
- ・住民票の写し
- ・法人の定款※
- ・法人の登記事項証明書※
- ・ドメイン所有の書面
- ・18歳未満に当サイトを閲覧させない方法等
※法人の場合
【交付手数料】
3,400円
3.そもそも何が「アダルト動画配信業」に含まれるのか?
3-1.有料アダルト動画サイトやアダルトライブチャット
アダルト動画配信業の具体的な業態としては、主に有料アダルト動画サイトの運営やアダルトライブチャットの配信が挙げられます。近年では、FC2コンテンツマーケットのようなサイトを利用して動画販売を行ったり、ファンティアといったプラットフォームで自身のファンに向けアダルト動画を販売したりといったビジネスも人気です。
運営方法はアフィリエイト型やサブスク型、ライブ配信の「投げ銭」などさまざまですが、いずれも風営法上の映像送信型性風俗特殊営業にあたる有料サイトとして認識されます。
風営法で定義する条文のポイントを絞り込むと以下の通りとなるため、該当する場合には届出が必須です。
- ・有料で営む
- ・性的好奇心をそそる目的
- ・性的な行為を表す場面や衣服を脱いだ姿態を見せる
- ・アニメーション動画やAI動画も対象となる
- ・インターネットなどを用いて客に映像を見せる
3-2.風営法の届出が必要ないものは?
逆説的にとらえれば、上記の内容に該当しなければ届出の対象とはなりません。例えば、無料でのアダルト動画配信、裸体を扱っていても性的好奇心をそそる目的でないアート的要素の強いものなどが該当します。ただし、この場合はその映像の受信者側が芸術的な感覚を持って視聴しているかという点が重要です。
ただし、客観的に見て性的なコンテンツと捉えられればその限りではありません。
また、インターネット回線を使用しない動画の通信販売であれば良いのかと言えば、こちらは「無店舗型性風俗特殊営業(通販サイトでの販売)」に該当し、別の届出書による手続きが必要です。
警察による摘発を受けてしまうと、6ヶ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはその併科という厳しい罰則を受けることになるため、届出を前提とした運営を検討することをおすすめします。
4.海外・国内サイトのアダルトコンテンツ内容の違い
アダルト動画配信業は、海外サイトやサーバーを使用していても警察署への届出が必須であることをお伝えしましたが、展開できるコンテンツの内容には大きな違いがあります。その具体例を紹介します。
4-1.モザイクの有無(性器無修正)
海外・国内アダルトサイトの一番の違いと言えば「無修正」が許されるか否かという点でしょう。
国内サイトでは、性器の無修正映像を配信することは違法行為に該当します。そのため、コンテンツ内の性器にはすべてモザイク処理を施すことが求められます。
一方、海外運営のサイトでは無修正のコンテンツが一般的であるため、国内利用者も多いFC2などのサイトでは多くの無修正動画が見受けられます。
ただし、サイト規約・システム上のアップロードは可能であるものの、日本の法規制に違反したとして摘発を受けるケースは少なくありません。実際に、FC2やカリビアンコムといったサイトではわいせつ動画を配信・販売したなどの容疑で多数の逮捕者が出ています。
海外サイト経由の無修正動画販売は、警察にとって現行の法律では直接逮捕に踏み込めずとも、常に注視している分野であり、関連罰則の適用により制作会社や出演俳優を摘発している事例があります。
無修正動画の配信を目指すならば、海外サイトを利用するだけでなく、事務所・制作場所を国外に設定し、顧客も日本人以外を対象とするのが無難でしょう。
4-2.日本人AV女優と作品の数
国内運営のアダルトサイトは、多くのAV制作会社と取引しているため、日本人AV女優の作品を豊富に取り扱っています。
一方、海外運営サイトは基本的に海外で制作された動画を扱うため、日本人AV女優の作品が非常に少ない特徴があります。
日本の制作会社はそもそも無修正動画の制作を禁じられており、AV女優の無修正作品に対する考え方も海外とは大きく異なります。
動画販売する際は、日本人AV女優の豊富さを含め、販売コンテンツと閲覧者の趣向がマッチするサイト選びが重要になるでしょう。
4-3.ダウンロード制限
国内運営のアダルトサイトでは、ダウンロード可能なコンテンツに「DRM」技術が施されています。
DRMとは、Digital Rights Managementの略で、デジタルコンテンツの著作権保護や使用制限を目的とする技術のことです。
DRMがかけられた動画は、コピー防止や再配信・使用期間の制限、ライセンス認証、プラットフォーム制限などのあらゆる制限が設けられます。
海外運営サイトの動画ではこのような制限がかけられているケースが少ないため、利用者にとってコンテンツ使用の自由度が高まる一方、制作・販売者にとっては著作権や使用権限が侵される恐れがあります。
5.まとめ|アダルト動画配信は風営法の届出をお忘れなく
今回は、当事務所でも問い合わせの多い「海外サーバーを使えば無届でのアダルト動画配信は可能なのか」という疑問にスポットを当てて、その答えを紹介しました。
サーバーが海外に設置されている場合や海外サイト利用、AI動画やアニメーション動画の場合でも、日本国内での営業であれば届出は必須です。
ただし、営業の内容によっては判断が難しく、手続き方法に悩むケースもあるでしょう。運営方法に迷いが生じる場合は、風営法に特化した行政書士へ相談して手続きを進めることをおすすめします。
当事務所はナイトビジネス専門の行政書士事務所として、映像送信型性風俗特殊営業の届出については全国対応もしており、豊富な実績を持ちます。また、別法人で物件情報サイトも運営しているため、通常は使用承諾が下りにくいアダルト動画配信業向けの事務所のご紹介も可能です。
映像送信型性風俗特殊営業をご検討の方、物件探しが難航している方は、行政書士法人ARUTOまでお気軽にご相談ください。
参考記事①:アダルト動画配信の申請手続きについて
関連記事②:アダルト配信事業の登録ができる物件の探し方
関連記事③:電気通信事業の登録・届出と映像送信型性風俗特殊営業との関係
関連記事④:AV新法がアダルト配信事業に与える影響について