目次
1.はじめに
「特例風俗営業者」という制度についてご存じでしょうか。
これは、長年にわたって適正に風俗営業を続けている事業者が、一定の基準を満たした上で認定を受けることで、さまざまな優遇措置を享受できる制度です。この認定を受けることで、手続きや営業活動がスムーズになり、経営の安定化にもつながります。
この記事では、特例風俗営業者制度の概要や認定基準、メリット、さらには具体的な申請手続き方法について詳しく解説します。
「特例風俗営業者の認定を検討している」、「他店と差別化を図りたい」そんなお考えをお持ちの方は、ぜひ最後までご覧ください。
2.特例風俗営業者とは?どんな基準・条件がある?
風俗営業者にとっての優遇制度「特例風俗営業者」とは、いったいどんな制度なのでしょうか。まずは、その概要と認定基準について解説します。
特例風俗営業者の概要
特例風俗営業者とは、風営法の下で長期間適正に営業を続けている事業者を対象に、優遇措置を提供するための認定制度です。
風俗営業における「ゴールド免許」のような当制度の目的は、風俗営業業界の健全化を促進し、模範的な事業者を支援することにあります。
認定を受けた事業者は、手続きの簡略化や定期講習の免除といった特典を享受できます。この制度を活用することで、経営者の負担を軽減し、事業運営をより効率的に行うことが可能になります。
特例風俗営業者になるための認定基準
特例風俗営業者として認定されるには、以下4つの基準すべてを満たす必要があります。
- 1.風俗営業の許可を受けてから10年以上経過していること
- 2.過去10年以内に風営法に基づく処分を受けたことがなく、かつ、受けるべき事由が現にないこと
- 3.過去10年以内に管理者の解任勧告を受けたことがなく、かつ、受けるべき事由が現にないこと
- 4.過去10年以内に管理者講習の規定に違反していないこと
特例風俗営業者は店舗ではなく営業者に与えられる認定のため、複数の店舗を営む場合はすべての営業所で上記基準を満たす必要があります。
3.特例風俗営業者になるメリット
特例風俗営業者として認定されると、主に以下3つの優遇措置を受けられます。
- 1.構造及び設備変更の事後届出の許可
- 2.定期講習の免除
- 3.「マル優」認定証の掲示
それぞれ詳しく解説していきましょう。
- 構造および設備変更の事後届出の許可
本来、風俗営業では店舗構造や設備に変更がある場合、事前の届出が必要です。通常の変更承認手続きには「事前申請→検査→承認」の流れを要し、3~4週間ほど営業できない期間が発生します。
しかし特例風俗営業者として認定されると、事後の簡易的な変更届(即日)での手続きができるようになります。大規模な模様替えや客室の床面積変更、遊技機の入れ替えなども、事前申請なしでスムーズに実行可能です。
工事期間以外に営業をストップする必要がなく、経営へのリスクを最小限に抑えられる点は、特例風俗営業者としての一番のメリットといえるでしょう。
▼風俗営業の変更承認申請については、以下の記事でも詳しく紹介しています。
≫風俗営業変更承認申請・変更届等手続きについて~風俗営業許可後にすべきこと
- 定期講習の免除
通常、風俗営業の管理者は3年ごとの定期的な講習(風俗営業管理者講習)を受講する必要がありますが、特例風俗営業者は2回目以降の講習が免除されます。
定期講習の受講にかかる時間は一般的に4~6時間程度で、講習手数料は2,600円です。定期講習が免除されれば、手数料や拘束時間が不要になるだけでなく、適正に定期講習を受けない場合は警察から指示処分を受ける可能性もあるため、このリスクを免れる意味でも講習免除は大きなメリットといえます。
- 「マル優」認定証の掲示
特例風俗営業者として認定されると、マル優」のマークがついた認定証が交付され、これを風俗営業許可証の代わりに店舗に掲示できるようになります。
マル優の認定証は10年以上の優良な営業を続ける店舗の証、警察署(公安委員会)のお墨付きともいえる書類です。
事業者の信頼性と優良性を対外的にアピールできる重要な特典となり、他店との差別化、顧客からの信頼感向上、ブランド力アップ、従業員のモチベーション向上、地域社会からのイメージアップなど、さまざまな効果が期待できます。
風俗営業許可を取得しているだけでは得られない、大きな付加価値といえるでしょう。
4.特例風俗営業者の認定を受けるための申請・手続き方法
特例風俗営業者の認定を受けるためには、申請書などの必要書類を所轄の警察署へ提出し、審査を受ける必要があります。
必要書類の準備
申請に際しては、主に以下の書類と手数料(13,000円)が必要となります。
・特例風俗営業者認定申請書
・営業の方法(営業時間や営業内容を記載)
・営業所の平面図(営業所のレイアウトや求積表、照明・音響配置図などを記載)
・営業所の周囲の略図(条例で定める保全対象施設との位置関係を記載)
・誓約書(風営法第10条の2第1項各号のいずれにも該当することを誓約するもの)
提出図面の内容は、風俗営業許可の申請時書類と同様に、ち密で詳細な記載が求められます。また、現状と記載内容が異なると、違反を指摘される可能性もあるため注意が必要です。
提出書類の作成に不安がある場合は、風営法専門の行政書士への相談も検討しましょう。
所轄の警察署への提出
必要書類を揃えたら、店舗が所在する地域を管轄する警察署の生活安全課に提出します。その際、事前に担当者に相談し、不備がないように確認しておくことがおすすめです。
申請後は審査が行われ、基準を満たしていれば認定が下ります。審査期間は、営業所の実態調査を実施してから30日程度が目安です。
なお、複数営業所について申請する際でも、いずれか一つの営業所を管轄する警察署に提出すれば、手続きを進めてもらえます。
まとめ
特例風俗営業者制度は、優良な風俗営業店の経営者に対して設けられた、きわめて重要な認定制度です。
厳格な基準を満たすことで得られる多くのメリットは、事業者にとって大きな魅力となっています。
特に変更承認手続きの簡略化については、長らく風俗営業を営む事業者がスムーズな経営と収益化を続けるうえで非常に大きなメリットです。客のニーズに合わせた店舗改装なども、格段に手を付けやすくなるでしょう。
10年以上にわたり特段の問題なく風俗営業を続けている方は、積極的に認定を目指すことをおすすめします。特例風俗営業者の認定により、ワンランクアップした経営が実現できるでしょう。
渋谷区恵比寿を拠点に活動する行政書士法人ARUTOは、風俗営業に関する複雑な法的手続きに精通した専門家集団です。
豊富な経験と専門知識で、お客様の事業運営をサポートいたします。特例風俗営業者の認定申請から、日常的な法律相談まで、ワンストップでお応えいたします。ぜひお気軽にご相談ください。