風俗営業の人的欠格事由 許可を取得できない人の要件とは

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コラム

風俗営業の欠格事由

風俗営業の欠格事由とは

風俗営業許可の申請者には、欠格要件があります。

「欠格」とは、関連法令等が要求する資格を満たしていない状態を指し、該当する場合には申請することができません。

また、許可がおりた後でも欠格事由に該当する状態になった場合には、許可の取り消し処分を受ける恐れがあります。

 

欠格事由の要件

風俗営業は「善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため」として、公安委員会により許可の条件が設けられています。

その内容は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第4条」にて定められ、「人的要件」と「営業所の要件」について示されています。

主な内容は次のとおりです。

 

【人的要件】

  1. 1.破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  2. 2.1年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ、又は一定の罪を犯して1年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
  3. 3.集団的に、又は常習的に暴力的不法行為等を行うおそれのある者
  4. 4.アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
  5. 5.心身の故障により風俗営業の業務を適正に実施することができない者
  6. 6.風俗営業の許可を取り消されて5年を経過しない者
  7. 7.営業に関して成年者と同一の能力を有しない未成年者
  8. 8.法人の役員、法定代理人が上記1から6までのいずれかに該当する者があるとき

 

通常は営業者の人的要件が問われますが、法人の場合は取締役だけでなく役員およびそれに準ずるもの全員について要件の確認が必要です。

風営法の管理者になる方も対象となります。

 

【営業所の要件】

  1. 営業所の構造又は設備が風俗営業の種別に応じて、国家公安委員会規則で定める技術上の基準に適合しないとき
  2. 営業所が、東京都の条例で定める地域内にあるとき
  3. 営業所に管理者を選任すると認められないことについて相当な理由があるとき

 

営業所の構造および設備や、所在地域、管理者選任等についての事由が示されています。

風俗営業は人的事由と営業所の事由の両方をクリアすることで、許可申請に至ることができるのです。

 

参考:警視庁「風俗営業、特定遊興飲食店営業許可申請(欠格事由・必要書類)」

https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/fuzoku/kyoka_shinsei.html

 

人的欠格事由の内容

今回は、特に定めの内容が細かい人的要件にスポットを当て詳細を見ていきましょう。

 

1.破産者で復権していない者

健全な営業者となるには、破産手続き中の状態は好ましくないと判断されます。

ただし、通常は破産手続きを完了し破産が認められると復権が叶うため、風俗営業の申請前に真っ当な手続きを踏んでいれば該当しません。

 

2.1年以上の懲役または禁錮の刑を受け、刑の終了から5年経過しない者

過去に何らかの犯罪で1年以上の懲役刑または禁錮刑に処された人は、刑が終わってから5年経つまでは申請の資格がありません。

実際の入所が8カ月だとしても、1年以上の刑を言い渡されている場合にはこれに該当します。

どんな罪でも該当するため、飲酒運転などの道路交通法違反(さらに執行猶予中など)でも対象になり得ます。

 

3.特定の罪で1年未満の懲役または禁錮または罰金刑を受け5年を経過しない者

1年未満の犯罪でも、定められた内容に該当する犯罪の種類によっては欠格と判断されます。

 

対象となる犯罪は次の通りです。

 

  • 風俗営業法についての罪

第49条

1号 無許可営業

2号 不正な手段による許可

3号 名義貸し

4号 営業停止等違反

5・6号 性風俗特殊営業の規定違反

7号 無許可営業(特定遊興飲食店)

 

第50条

1号 無承認構造変更

2号 不正な手段による構造変更承認

3号 性風俗特殊営業の規定違反

4号 未成年者に関する規定違反

5~9号 性風俗特殊営業の規定違反

10号 禁止地域内での深夜種類提供営業

 

以上が風俗営業に関する罪の内容です。

なお「客引き」で逮捕され裁判で罰金刑を受けたというケースが稀にありますが、こちらは「迷惑防止条例違反」に該当し、対象の罪ではないため風俗営業の申請者となることができます。

 

  • その他の罪

・わいせつ

・賭博

・誘拐・人身売買

・組織犯罪

・売春・児童ポルノ

・労働

・児童福祉

・船員職業

・出入国管理

 

以上の内容で罰を受けた場合は対象となります。

 

上記に関する犯罪は風俗営業法には直接かかわらないものの、従業員への危害や犯罪への巻き込みを想像させるものです。

「2.1年以上の懲役または禁錮の刑を受け、刑の終了から5年経過しない者」の内容と同等に、執行猶予中でも上記の罪に当たれば欠格対象となります。

ただし、執行猶予については完了後5年の経過を待つ必要はなく、執行猶予を終えた段階で申請の資格を得られます。

 

4.集団的または常習的に暴力行為を行う恐れがある者

対象となる罪において、脅迫や傷害といた暴力に関する罪は意外にも対象外となっていますが、暴力団員または暴力団の関係者と判断された場合には欠格事由に該当します。

 

5.アルコールおよび薬物の中毒者

アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者である場合には、風俗営業の申請者になれません。

この点は第三者が判断するのが非常に難しい部分ですが、状況を隠して許可を得た場合には風営法違反となります。

 

6.心身の故障により風俗営業の業務を適正に実施することができない者

「心身の故障」とは、すなわち「精神の機能の障害」です。

身体または知的障がい者を含み規定されるものではないかと、あらゆる方面から長年議論されてきた内容ですが、内閣府等においても表現の見直しが提示されています。

現在では一般的に、精神疾患等を持つ人が当項目に該当すると判断されます。

 

7.風俗営業許可を取り消され、取消日から5年を経過しない者

過去に風俗営業許可が取り消された場合には、取り消し日より5年経過しなければ新たな申請の資格を得られません。

法人の場合は、前営業においての申請者および管理者でなくとも、役員であった場合はこれに該当する点に注意が必要です。

 

8.風俗営業許可取り消しにかかる聴聞が公示され許可書を返納し、返納から5年を経過しない者

過去に風俗営業許可の取り消し処分が下されておらずとも、聴聞が公示されたうえで許可書を返納した経歴があれば、返納日から5年経過しなければ欠格者となります。

また前項と同様に、法人の場合は役員であった者も許可を受けることができません。

 

9.営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者

基本的に未成年者は営業に関する能力を有しないと判断され、風俗営業許可を申請できません。

ただし、以下の条件に当てはまれば営業者として認められます。

 

・既婚者である場合…民法上で成人同様と判断されます。

・法定代理人に風俗営業を認められた場合…民法上で成人同様と判断されます。

・風俗営業を相続し、法定代理人が欠格事項に該当しない場合…相続の権利が尊重されます

 

しかし、未成年者が営業者として認められた場合でも、当然のことながら店舗内で接待や飲酒をすることはできません。

 

10.法人でその役員のうちに上記のいずれかに該当する者

各項でお伝えした通り、法人の場合は申請者や取締役以外でも役員に欠格者がいれば申請ができません。

また申請者の法定代理人においても、欠格事由にいずれも該当しないことが求められます。

 

その他①.迷惑防止条例(客引きなど)で摘発を受けた者

客引きで逮捕(迷惑防止条例違反)された経験があるなど、この場合は、必ずしも欠格事由に該当するとは限りません。処分など詳細に確認する必要があります。

 

その他②.深夜酒類営業、性風俗特殊営業(デリヘル)には欠格事由の適用がない

深夜酒類営業や性風俗特殊営業(デリヘル)を営もうとする方で、犯罪歴も気になるかと思いますが、欠格事由の適用を受けるのは、

  1. 1.風俗営1~5号
  2. 2.特定遊興飲食店営業
  3. 3.上記法人営業の場合は代表取締役、役員、監査役を含む
  4. 4.風営法の店舗管理者

上記1~4であり、深夜酒類提供飲食店や性風俗特殊営業の営業者に欠格事由はありません。

 

 

まとめ

風俗営業許可の人的要件に関する欠格事由について解説しました。

さまざまな要件がありますが、刑の執行に関する部分では対象となる法律が多岐にわたり、自身での判断は非常に難しいと言えるでしょう。

しかも、風俗営業許可の申請は保健所に加えて警察署とのやり取りも必要になるため、一般的な飲食店営業許可の申請と比べても複雑です。

自身の経歴に不安がある場合には事前に風営法専門の行政書士に相談することで、安心してスムーズに申請を進められるでしょう。

 

当事務所では、風俗営業に特化したビジネス関連の申請に年間300件以上携わっています。

ご相談は無料です。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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