目次
- 1.はじめに
- 2.アミューズメントカジノは風俗営業
- 2-1.アミューズメントカジノ開業に必要な2つの許可
- 2-2.景品提供を禁止する条文
- 2-3.賞品を提供できるケース
- 2-4.クレーンゲームでは1,000円以下の景品提供が可能
- 2-5.「総付景品」はアミューズメントカジノでも提供可能
- 2-6.チップ(メダル)の預かりシステムに注意
- 2-7.チップ預かり証の発行は違法
- 3.まとめ
1.はじめに
近年、ポーカーなどを楽しむためのアミューズメントカジノBARが人気を集めています。
アミューズメントカジノ営業は風営法5号営業に当たるのですが、ゲームの結果に応じて賞品やそれに類する金品などの提供は禁じられています。
しかし、同じく5号営業である通常のゲームセンター営業では、クレーンゲームなどで景品をもらえることはもはや一般常識であり、違法だと指摘する人は誰もいないでしょう。
風営法5号営業での賞品提供にはさまざまな解釈があり、業態や価格によっても許容される内容が異なります。
この記事では、アミューズメントカジノをはじめとする5号営業における賞品提供の考え方をお伝えします。
アミューズメントカジノやポーカーバーの開業を検討する方は、しっかりと確認したうえで計画を進めましょう。
2.アミューズメントカジノは風俗営業
2-1.アミューズメントカジノ開業に必要な2つの許可
お酒を飲みながらポーカーやバカラなどのカードゲームやルーレットを楽しむ事を目的としたアミューズメントカジノBARは、開業にあたって2つの許可申請が必要です。
まず保健所による「飲食店営業許可」を取得したうえで、次に風俗営業許可を取得します。
風俗営業では1号から5号まで5つの業態や形態に分けられている風俗営業ですが、アミューズメントカジノ営業は「射幸心をそそるおそれのある遊技」として5号(ゲームセンター等)に該当します。
2-2.景品提供を禁止する条文
アミューズメントカジノはあくまでポーカーやバカラ、ルーレットなどを提供し遊技に興じてもらうことを目的とした場です。
店側からサービス料を受け取ったうえでチップ(コイン)を貸し出し、コインを賭けて遊んでもらうことは可能ですが、そのコインを買い取り金銭と交換するような行為は認められません。仮に行った場合は、風営法違反だけでなく刑法の賭博罪に問われることにもなります。
換金が不可であれば景品や店内での飲食物と交換できるようにしようと考える方もいるかもしれませんが、風営法5号営業店においてゲームの結果に応じた賞品提供は、条例において禁止行為であることが明確に定められています。
「第2条第1項第4号のまあじやん屋又は同項第5号の営業を営む者は、前条第1項の規定によるほか、その営業に関し、遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない。(風営法第23条第2項)」
麻雀店やパチンコ店は風俗営業4号営業、ゲームセンターやアミューズメントカジノは風俗営業5号営業にあたり、本来は賞品提供が認められていないことが分かります。勝負によって金品や飲食物の提供は、一切禁止されています。
ここで言うアミューズメントカジノ営業における賞品(金品)ですが、ゲームの結果に応じて提供する飛行機のチケットやゲーム参加券
平成30年1月30日付警察庁生活安全局風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について(通達)
2-3.賞品を提供できるケース
なぜクレーンゲームでは、賞品提供が許容されているのか
本来は禁止されているはずの賞品提供ですが、ゲームセンターのクレーンゲームなどでは日常的に行われているサービスです。これらは取り締まれることなく違法行為の対象となることもありません。
決して合法といえる行為ではありませんが、黙認されている状態と解釈するのが妥当です。
警察庁が公表している風営法の解釈運用基準では、日本アミューズメント産業協会が定めるガイドラインによって、クレーンゲーム等の景品について以下のように明示されています。
「遊技の結果が物品により表示される遊技の用に供するクレーン式遊技機等の遊技設備により客に遊技をさせる営業を営む者は、その営業に関し、クレーンで釣り上げるなどした物品で小売価格がおおむね1,000円以下のものを提供する場合については法第23条第2項に規定する「遊技の結果に応じて賞品を提供」することには当たらないものとして取り扱うこととする。(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について)」
また、この解釈における賞品の価額は令和4年2月まで800円とされていましたが、同年3月以降は1,000円に引き上げられました。
「景品として提供する物品は小売価格でおおむね 1,000 円以下のものとする。小売価格とは、景品専用に開発された物品を除き、一般市場における価格とする。なお、景品専用に開発された物品であっても1個あたりの価格はおおむね1,000 円以下のものとする。(アミューズメント施設における景品提供営業のガイドライン)」
引用HP:一般社団法人日本アミューズメント産業協会|JAIA
以上の内容からも、1,000円以下の賞品提供が可能なのはクレーンゲーム等のアミューズメントマシンにより提供される景品のみです。
ポーカーなどのゲームの対価として賞品提供することは、価格によらず認められないことに注意が必要です。
2-4.クレーンゲームでは1,000円以下の景品提供が可能
前項でお伝えした通り、風俗営業5号営業のなかでもクレーンゲーム等のアミューズメントマシンによる賞品提供は許されているのが実情です。
しかし、ゲーム機など明らかに1,000円を超える高額商品が設置されているケースがありますが、これは違法の可能性が高いものです。なぜ摘発に至らないのかというと、被害者による申告がなく、警察が積極的に動いていない状態であるからと考えられます。
ただし、違法行為である点には変わりないため、客との間でトラブルが発生するような事態になれば摘発に至る可能性が高いものと推測されます。
2-5.「総付景品」はアミューズメントカジノでも提供可能
アミューズメントカジノでも提供できる景品としては「総付景品」が挙げられます。
ベタ付け景品とも呼ばれ「来店者全員プレゼント」や「先着〇名様」などといった方法で景品を提供するものです。
提供できる景品の価格の上限は、消費者庁の告示により以下の通りに定められています。
- ・取引価格の10分の2
- ・上記価格が200円未満の場合200円
同じ風俗営業であるパチンコ店では、団体のガイドラインにより総付景品について「価格が200円以下」、「提供は月1回」、「菓子類・飲料・ティッシュ等の日用雑貨」と定められています。
アミューズメントカジノなどの5号営業についても、上記の基準を参考にすれば法令違反になる可能性は低いと言えます。
2-6.チップ(メダル)の預かりシステムに注意
チップの持ち帰りは禁止行為
アミューズメントカジノにてサービス料を受け取りチップ(メダル)などを貸し出すことは可能ですが、客の退店時にチップを持ち帰らせることは禁止されています。
遊戯場営業者の禁止行為を示した風営法第23条では「遊戯の用に供する玉、メダルその他これらに類する物を客に営業所外に持ち出させること」と記載されています。
獲得したチップを次回の来店時にも使用してもらうには、店側で預かりシステムを設けることが必要です。
2-7.チップ預かり証の発行は違法
客によるチップの持ち帰りが認められず、再来時に継続して遊んでもらうにはチップの預かりシステムが有効であることをお伝えしましたが、その際にチップの枚数を確認できる預かり証は発行してはいけません。
風営法では「遊技球等を客のために保管したことを表示する書面を客に発行すること」を禁止しているため、会員カードなどにチップの預かり枚数を記載してはいけないということです。
パチンコ店などでは会員がICカードを使って玉を引き出すシステムが合法で認められていますが、アミューズメントカジノでのシステムとして近年増加しているアプリによる管理は注意が必要です。
アプリ画面は客自身が印刷して書面化できるため、ただちに違法とは言えないものの、違法性の高い行為とみなされる可能性が高まります。
アミューズメントカジノでチップ預かりシステムを設ける場合は、店舗側で台帳を用意して管理するか、パチンコ店と同様のICカードシステムを導入する方法を検討しましょう。
3.まとめ
近年人気が高まっているアミューズメントカジノ営業では、ゲームセンターなどと同じ風営法5号営業に属しますが、クレーンゲーム等の景品のように賞品を提供する行為は禁止されています。
ただし、来店者がもれなく対象となる「総付景品」であれば、ゲームの結果に起因しない景品として提供が可能です。
また、客によるチップの持ち帰りや、チップ預かり証の発行も禁止されている点に注意しましょう。
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