2020年10月22日公開 / 2026年11月更新

1.はじめに
カウンター越しでも、接客の内容によっては接待に当たります。一方、注文に応じた飲み物の提供に伴う挨拶や短い世間話は、接待に当たらない例です。カウンターの有無だけでなく、実際にどのようにお客様をもてなしているかで考えます。
そのことを分かったうえで、「同じような店はほかにもたくさんある。自分の店は摘発されないだろう」と考えている経営者がいます。
適法だと思っているのではなく、摘発されないと思っている。この二つは、似ているようで全く違います。私は元刑事としての経験と、行政書士法人ARUTOでの許認可実務を踏まえ、店の営業を確認しています。
ほかの店が営業していることは、自分の店の適法性を保証するものではありません。ほかの店の許可や本当の営業内容は、外から見ただけでは分かりません。「あの店もやっている」は、自分の店に許可が要らない理由にはなりません。
私は、摘発されるかどうかを予想する前に、何を売りにする店なのかを決めてほしいと思っています。接待を営業の柱にするのか、接待をせずに深夜営業をするのか。今のサービスを続けたいという話と、そのために必要な許可の話は、切り離せません。
店主の皆さんには、まずメニューと料金表、接客マニュアル、求人広告、ホームページの出勤表を手元に出して、実際のスタッフの動きと照らし合わせてほしいと思います。書類に何が書かれているかと、現場で何をしているかを一緒に見直してみてください。
2.カウンターよりも実際の接客内容を見る

風営法は、接待を「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定めています。警察庁の解釈運用基準では、特定の客やグループに対し、通常の飲食サービスを超えて積極的にもてなす行為として説明されています。
特定少数の客のそばに付き、継続して談笑の相手をしたり、酒などを提供してもてなしたりする行為は接待に当たります。カウンター越しでも、特定の客の会話相手を継続して務めるような接客なら、カウンターがあることだけで接待から外れるわけではありません。
一方、注文に応じて飲み物を提供するだけの行為や、それに付随する挨拶・若干の世間話は、接待に当たらない例です。「会話をしたらすべて接待」という説明も正確ではありません。スタッフや客の性別だけで判断が変わるものでもありません。
席の形や店の名前より、誰に対して、どのようなサービスをしているかを確かめてください。なお、談笑の例にある継続性を、ゲームや身体接触など、すべての接待行為に共通する条件と考えることもできません。
3.私なら警察官の立場でその店を見る

ここからは、私が捜査に携わった経験をもとに、店の運営が外からどう見えるかを考えます。
私は、経営者の「接待はしていません」という説明を聞いたうえで、警察官の立場になってその店を見ます。メニューには何が書いてあるか。誰の売上を評価しているか。お客様は何を楽しみに来ているのか。そうして見ると、店が提供しているサービスが具体的になってきます。
ここで挙げるものは、それだけで違法になる項目の一覧ではありません。私が実務で見聞きしてきた例を使って、料金や店の仕組みと、実際の接客をどう結び付けて見るかを説明します。
キャストドリンクの代金で何を提供しているのか
キャストドリンクがメニューに載っていたら、私はその値段だけでなく、注文した後に何が起きるのかを確認します。飲み物を提供して終わりなのか。そのキャストがお客様の相手を続けるのか。お客様が代金を払って期待するサービスまで見なければ、店の営業は分かりません。
バックヤードの従業員別ドリンク売上ランキングも同じです。売上表そのものより、その数字を上げるためにキャストがどのように接客しているかに目を向けます。メニュー、売上の仕組み、現場でのやり取りを別々に見ないことが大切です。
チェキやオリシャンが示す店の売り
お客様とキャストがボトルと一緒に写ったチェキ、キャストの写真入りオリジナルシャンパン、誕生日イベント。こうしたものからも、店が何を売りにしているかが見えてきます。
高額なボトルがあるかどうかより、その購入にどんなもてなしが結び付いているか。チェキを撮る前後に、特定のお客様の相手を続けているのか、身体の接触があるのか。私が確認したいのは、商品やサービスの名前ではなく、その場で行われていることです。
ガールズバーで、女の子からの「ビンタ1,000円」というオプションサービスのある店を見かけたこともあります。変わったメニューがある、で終わる話ではありません。何に料金を付け、キャストがお客様に何をするサービスなのか。そう考えると、メニューが接客内容を説明する資料でもあることが分かると思います。
求人と出勤表を店内の接客と照らし合わせる
求人広告には、従業員にしてほしい仕事が書かれています。ホームページの出勤表は、お客様に誰の出勤を知らせているのかが分かります。私は、こうした説明と、実際にキャストがしている仕事を照らし合わせます。
店名や届出上の説明だけを整えても、求人で求めている仕事と現場の接客が別の方向を向いていれば、その食い違いは残ります。
ボックス席のスツールにも目が向く
ボックス席のスツールについて、警察から「キャストが座る椅子ではないか」という趣旨の確認がされることもあります。私が実務で見聞きしてきた例の一つです。椅子を見ているようで、誰がそこに座り、どのようにお客様の相手をするのかを見ているわけです。
全国の警察が同じ手順で確認する、という話ではありません。ただ、経営者の目では当たり前に見えるものも、立場を変えると違って見えます。だからといって、資料を隠したり椅子を片付けたりすればよいのではありません。見直すのは、実際の接客と許可・届出の関係です。
4.ゲームやカラオケも客との関わり方を確認する

黒ひげ危機一発やワニワニパニックなどのゲーム、カラオケ、デュエット、タンバリンを使った盛り上げも、実務で話題になる例です。遊具や設備を置いているかだけでなく、スタッフがどのように客に関わるかを確認します。
警察庁の解釈運用基準では、スタッフが特定少数の客と一緒にゲームや競技をする行為は、接待に当たります。客が一人で遊ぶ、客同士で遊ぶという場合とは区別されます。ゲームの名前や一回の短さだけで、接待ではないと判断することはできません。
カラオケでも、特定少数の客のそばで歌うことを勧めたり、その歌を手拍子・拍手などで盛り上げたり、客と一緒に歌ったりする行為は接待に当たります。客からデュエットを頼まれた場合でも、頼まれたことだけで接待から外れるわけではありません。
単にカラオケの準備をする行為とは分けて考えます。また、不特定の客を店側が積極的に盛り上げる場合には、接待とは別に「遊興」の検討が必要です。接待に当たらないから、深夜にどのような催しをしてもよいということではありません。
5.10分交代のマニュアルが店の説明書になることもある

スタッフを10分ごとに交代させるマニュアルを設けている店も、実務で見聞きしました。しかし、警察庁の解釈運用基準に「10分で交代すれば接待に当たらない」という例外はありません。
私は、このマニュアルを誰の立場で読むのかが大事だと思っています。店側は、一人のキャストが長く接客しないためのルールだと考えているかもしれません。では、それを警察官の立場で読むと、どう見えるでしょうか。
内容によっては、誰がお客様に付き、何分後に次のキャストへ引き継ぐのかが書かれている。接待をしていない証拠のつもりが、店としてどう接客を続けるかを書いた説明書になってしまうこともあるのです。
交代したことだけで、接待に当たらないとは判断できません。見るべきなのは、一人が何分接客したかだけでなく、担当者が替わった後も、店として特定のお客様へのもてなしが続いているかです。マニュアルに何が書かれ、現場でどう動いているかを合わせて確認します。
接待をしない店にするなら、時間だけでなくサービスの中身を変える必要があります。反対に、キャストと会話し、一緒に楽しむ接待を営業の柱にするなら、私は風俗営業1号許可の取得を勧めます。書面上のルールだけを整えて、接客は今までどおり、という方法は勧めません。
6.摘発されていないことと適法であることは違う

では、同じような営業に見えても、摘発される店と営業を続けている店があるのはなぜか。私は、警察の人員や事件処理能力、店の悪質性、騒音などの苦情、店舗規模など、複数の事情が影響すると考えています。これは元刑事としての経験や許認可実務を踏まえた私の見解であり、警察が公表した公式な取締り基準ではありません。
だからこそ、外から見える「摘発された」「まだ営業している」という結果だけで、適法かどうかは決められません。これまで指摘されなかったことは、その営業を認めてもらったこととは違います。
私は、摘発を避ける方法をお伝えしたいのではありません。「うちなら大丈夫だろう」を営業の前提にしないでほしいのです。確認すべきなのは、警察に目を付けられるかではなく、今のサービスに必要な許可があり、その規制を守っているかです。
7.接待を営業の柱にするなら許可を前提に計画する

深夜酒類提供飲食店営業の届出は、接待を認める許可ではありません。設備を設けて客を接待し、飲食などをさせる営業には、原則として風俗営業1号の許可が必要です。昼間の営業でも接待を行うなら、許可の問題は生じます。
ただし、許可を受ければ朝まで接待営業ができるわけではありません。営業できる時間や地域、構造設備などにも規制があります。東京の取扱いをそのまま神奈川へ当てはめたり、「繁華街なら午前1時まで」と一律に考えたりせず、店舗所在地と予定する営業を具体的に確認してください。
刑事罰:無許可営業
必要な許可を受けずに風俗営業を行うことと、許可を受けた店が営業時間の制限に違反することは、法的に同じ問題ではありません。
必要な許可を受けずに風俗営業を行った行為者には、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科が定められています。法人の業務に関して行われた違反で両罰規定が適用される場合、その法人には3億円以下の罰金が科されます。(風営法第49条・第57条)
行政処分:許可店の営業時間違反
許可営業者が風営法13条1項の営業時間制限に違反した場合、その違反自体には風営法上の直接の刑事罰はありませんが、指示や営業停止、許可取消しなどの行政処分の対象となり得ます。さらに、営業停止命令等に違反した場合は刑事罰の対象となります。違反の種類と処分を分けて理解し、いずれも放置しないことが大切です。
8.相談案内:現在の接客と許可の整合性を確認しましょう
相談の際は、許可証や届出の内容、店舗の平面図、営業時間、メニューと料金、求人・ホームページの記載、接客マニュアルなどをご用意ください。何を掲示しているかだけでなく、スタッフが客にどのように対応しているかも具体的に伺います。
行政書士法人ARUTOは、年間300件以上の許可申請に携わっています。接待を営業の柱にしたい、カウンター越しの今の接客が不安、深夜営業との区別を整理したいなど、店舗の実態に即してご相談ください。
風俗営業許可や、接待を行わない深夜営業の届出について、物件契約や内装工事の前はもちろん、今の営業に不安がある場合も、実際の接客内容から一緒に整理しましょう。警察対応や刑事事件の問題が生じている場合は、必要に応じて弁護士への相談も検討してください。


