風営法店舗の閉店・廃業(返納)手続き|必要書類や提出先を詳しく解説

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コラム

目次

1.はじめに

「長年営業を続けてきたバーを畳みたい」、「キャバクラの経営が思わしくない」、さまざまな理由で閉店・引退を検討する経営者の方は少なくないでしょう。

風俗営業の許可を受けて営んでいた店舗の場合、廃業時にすべきことは山積みです。

廃業状態にもかかわらず必要な手続きを怠ってしまうと、各種行政機関から問い合わせがくるだけでなく、30万円以下の罰則が科せられる可能性も。そんな事態を免れるため、この記事では風俗営業店舗を閉店・廃業する際に必要な手続きについて詳しく解説します。

廃業時に必要な事前準備や書類の提出先、さらには契約解除すべき各種サービスの内容についても触れていきます。風営法のお店を閉めようとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

2.廃業前の事前準備

廃業を決断したら、実際の手続きに入る前に関係各所へ事前報告しましょう。

取引先や従業員への対応、賃貸契約の解約通知など、関係者とのコミュニケーションを円滑に進めることで、後のトラブルや余計な出費を防ぐことができます。

 

2-1.取引先と金融機関へ連絡

まず、取引先に対して廃業の意向を伝える必要があります。

酒類や食品の仕入れ先、カラオケ機器やリース機器の業者など、定期的に取引がある相手に対して、早めに連絡を入れましょう。

特に未払いの請求がある場合は、その清算についても話し合いが必要です。また、廃業にともなう最終的な支払いスケジュールについても明確にしておくことが大切です。

同時に、金融機関にも廃業の連絡を行います。廃業に伴ってローンの返済や取引口座の処理を行う必要があるため、こちらも早めに対応しておくことがおすすめです。

 

2-2.従業員へ通告

従業員を雇用している場合は、廃業に関する通告を正式に行います。

雇用契約に基づき、退職に関する通知や最終給与の支払い、社会保険や雇用保険の手続きなど、法令に従った処理が必要です。従業員が新たな就職先を探す時間を確保するためにも、できるだけ早めに知らせることが望ましいでしょう。

 

2-3.オーナーや管理会社へ解約通知

店舗が賃貸物件である場合、物件のオーナーや管理会社に対して解約したい旨を伝えましょう。

一般的には解約の予告期間が契約に定められているため、それに従って数カ月前に解約通知を提出することが求められます。契約内容によってはすぐに解約できず、違反金が発生する可能性もあります。

退去時の清掃や原状回復の義務についても確認し、スムーズな退去ができるように準備しましょう。

 

 

3.廃業時の手続き先と必要書類

風俗営業店舗を廃業する際、複数の行政機関への手続きが必要となります。それぞれの提出先と必要書類は以下の通りです。

 

手続きの内容や期間について、さらに詳しく解説します。

 

警察署

□廃止届出書

□風俗営業許可証(返納)

 

風俗営業の廃業時には、営業許可を発行した警察署に廃止届出書を提出します。

俗営業法に基づいて許可を受けた業種の場合、許可証の返納も義務となっています。閉店から10日内に返納書を提出しましょう。

速やかに手続きをしないと30万円以下の罰則に課されるため注意が必要です。「深夜酒類提供飲食店」でも、廃止届の提出は義務となっています。

 

保健所

□廃業届

□飲食営業許可書(返納)

 

飲食物を提供する店舗であれば、保健所にも廃業の届出が必要です。さらに、風俗営業と同様に許可書の返納が必須となるため、閉店から10日以内に提出しましょう。

 

消防署

□防火管理者解任届

 

飲食店などは開業時に防火管理者の選任が義務付けられていますが、閉店にともない解任届を出すことも求められます。

具体的な期日は定められていませんが、警察署や保健所への手続きと一緒のタイミングで迅速に行うのが良いでしょう。

 

税務署

【個人事業主の場合】

□個人事業の開業・廃業等届出書(個人事業主の場合)

□給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書(従業員に給与支払いがある場合)

□所得税の青色申告の取りやめ届出書(青色申告を取りやめる場合)

□事業廃止届出書(課税事業者の場合)

 

【法人の場合】

□異動届出書(解散届、清算結了届)

□確定申告書(解散事業年度、清算結了年度分)

□清算確定申告書

 

税務署には、廃業にともなう事業の終了届を提出します。

個人事業主の場合は、原則一カ月以内に「個人事業の開業・廃業届出書」を提出します。それ以外の書類については、従業員の有無や確定申告の方式、事業者種類などに応じて該当するものを届け出ます。

法人の場合はさらに、解散・清算に関する手続きが必要です。株主総会での解散決議や解散登記・清算人選任登記を行ったうえで、「異動届出書」を提出します。

法人の解散は手順や確定申告の方法なども非常に複雑なため、税理士などによる専門家のサポートが必至といえるでしょう。

 

都道府県税事務所

□廃業の届け出(名称は各都道府県による)

 

個人事業主の場合、都道府県税事務所にも廃業の届出が必要です。

書類の名称や提出期限はそれぞれ異なるため、店舗所在の都道府県税事務所ホームページで詳細を確認しましょう。

例えば東京都では、所轄の都税事務所へ「事業開始(廃止)等申告書」を事業廃止から10日以内に提出することが求められています。

 

参考:東京都主税局|事業を始めたとき・廃止したとき

 

労働基準監督署

□労働保険確定保険料申告書

 

従業員を雇用して労働保険に加入している場合、労働基準監督署への届出も必要です。

期限は閉店から50日以内に設定されているため、他の手続きに比べ猶予があるといえるでしょう。

労働基準監督署では、退職にともなう法的な手続きがスムーズに行われるようサポートしてくれます。

 

日本年金機構

□健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届

 

従業員を雇用して健康保険や厚生年金保険に加入している場合は、日本年金機構にも廃業に関する届出を行います。

提出期限は閉店から5日以内と非常に短いため、あらかじめ準備を進めておくことが大切です。

 

公共職業安定所

□雇用保険適用事業所廃止届

□雇用保険被保険者資格喪失届

□雇用保険被保険者離職証明書

 

雇用保険に加入している従業員がいる場合、公共職業安定所(ハローワーク)にも廃業の報告を行います。閉店から10日以内に、上記3種類の書類を合わせて提出します。

「雇用保険被保険者離職証明書」は提出必須の書類ではありませんが、退職者が失業給付を受けるための大切な書類です。転職先の有無や年齢などを確認しながら、作成を検討しましょう。

 

 

4.店舗名義での契約解除も忘れずに!

廃業手続きと同時に、店舗名義で契約している各種サービスの解除手続きも忘れないようにしましょう。

 

インフラ

電気、水道、ガスなどのインフラ契約は、廃業日をもって解除します。

これらの契約を適切に解除しないと、廃業後も基本料金が発生し続ける可能性があるため、早めに手続きを行いましょう。

 

リース品(カラオケ含む)

カラオケ機器や厨房設備のリース契約も、廃業に合わせて解約する必要があります。リース契約には解約に関するルールが設けられている場合があるため、契約書をしっかりとチェックしながら手続きを進めてください。

 

クレジットカード

店舗で利用していたクレジットカードの契約も忘れずに解約手続きを行いましょう。特に、業務用のカードや支払い手続きに関する契約は、廃業に合わせて処理する必要があります。

 

店舗総合保険

店舗の火災保険や損害保険などの契約も解約手続きが必要です。解約にともなう返金や補償の有無についても確認し、手続きが完了したことを必ず確認しましょう。

 

 

5.法人の場合は廃業ではなく「事業譲渡」も可能

法人が風俗営業を営んでいる場合、廃業の選択肢だけでなく「事業譲渡」もひとつの手段です。

風俗営業店は原則として引き継ぎの営業ができず、新規の許可申請が必要です。

しかし法人同士による合併などの事業継承の手続きを行えば、後任者が風俗営業許可の再申請をせずに、そのまま営業を継続できます。

管轄の公安委員会によっても可否は異なりますが、これが実現すれば事業の継続性が確保され、顧客や従業員に対してもスムーズな移行が可能になるでしょう。

 

 

6.まとめ

風俗営業店舗の閉店や廃業手続きは、想像以上に多岐にわたります。取引先や従業員、オーナーへの連絡をはじめ、警察署や保健所、消防署など、複数の行政機関に対して必要な書類を提出する必要があります。また、インフラやリース品、保険などの契約解除も忘れず行わなければなりません。

こうした手続きを期限内に円滑に進めるためには、事前の入念な準備が欠かせません。廃業や事業譲渡に関する手続きは法律的にも複雑な部分が多いため、行政書士などの専門家に相談しながら進めるのがおすすめです。

 

行政書士法人ARUTOは、風営法に関する手続きの専門家として、風俗営業の許可取得から廃業手続きまで、幅広いサポートを提供しています。

風俗営業店の閉店や廃業、事業承継に関するご相談があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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