目次
- 1.はじめに
- 2.風俗営業許可と建築基準法の関係性
- 3.用途地域による規制
- 4.火災対策に関する規制
- 4-1.内装制限
- 4-2.避難経路
- 4-3.都道府県の条例
- 5.改修や模様替えに関する規制
- 6.まとめ|専門家のサポートで法令を遵守した風俗営業を
1.はじめに
風俗営業の許可取得には、風営法だけでなく、消防法、そして建築基準法も密接に関係します。これらの法律はそれぞれ異なる目的と基準を持ち、時に矛盾が生じるケースもあります。
例えば、風営法的には許可が下りる地域でも、建築基準法の制限で開業できない、といった事態も起こり得るのです。
風俗営業の開業準備は、複雑な法規制との闘いでもあります。風営法は行政書士、建築基準法は建築士、消防法は消防設備士といったように、専門家も分野ごとに分かれています。物件探しから開業まで、各分野に精通した専門家との連携が成功のカギとなるでしょう。
この記事を参考に建築基準法の基礎知識を身につけ、スムーズな開業を実現してください。
2.風俗営業許可と建築基準法の関係性
2-1.なぜ建築基準法が関係するのか?
建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備、用途に関する最低基準を定めた法律です。地震や火災などの災害発生時に、被害を最小限に抑えることを主な目的としています。風俗営業を行う店舗も、当然ながら建築基準法の規制対象となります。
安全な営業を実現するために、建築基準法の遵守は必須条件と言えるでしょう。
2-2.風俗営業店の営業時に確認すべきポイント
風俗営業許可を取得するためには、風営法、消防法、そして建築基準法の3つの法律をクリアする必要があります。これらの法律はそれぞれ異なる視点で規制を設けており、その基準も複雑に絡み合っています。
すべての内容を網羅して把握することは並大抵のことではありませんが、風営法と建築基準法が関わるポイントを大きく3つに絞ると、主に以下の内容となります。
・用途地域規制:後述しますが、風俗営業が可能な用途地域は限られています。
・防火規制:内装材の制限や避難経路の確保など、火災対策に関する厳しい基準が設けられています。
・構造・設備変更の制限:店舗の構造や設備を変更する場合、所定の手続きが必要となります。
それぞれの内容について、次章より詳しく解説していきましょう。
3.用途地域による規制
風俗営業が許可される地域・されない地域
建築基準法では、都市計画法に基づき、都市を13種類の用途地域に分類しています。これらの用途地域は、住居系(8種類)、商業系(2種類)、工業系(3種類)に大別されます。そして風俗営業の許可に関しても、この用途地域が大きく関わってくるのです。
風営法では、原則として商業地域と工業地域でのみ風俗営業が認められています。住居地域では風俗営業が許可されず、営業所の一部が住居地域にまたがって存在している場合も許可は下りません。
さらに、建築基準法にも用途地域ごとの建築物用途制限が存在します。風営法上は許可されても、建築基準法の用途制限に抵触する場合、開業が難しくなるため注意が必要です。
例えば、キャバクラやホストクラブは、風営法では近隣商業地域でも営業可能ですが、建築基準法では商業地域と準工業地域に限定されます。
このように、風営法と建築基準法の規定が矛盾するケースも存在します。一般的には、風営法の許可が下りれば営業可能となることが多いですが、自治体によっては建築基準法の規定を優先する可能性も否めません。事前に管轄の自治体に確認することが重要です。
4.火災対策に関する規制
風俗営業の店舗は、不特定多数の人が利用する空間であり、火災発生時のリスクも高まります。そのため、建築基準法では火災対策に関する厳しい規制が設けられています。
火災対策はさらに消防法によっても規制されるため、営業者であれば基本的な内容は把握しておきたいところ。主な内容を解説します。
4-1.内装制限
内装は、店舗のイメージを左右する重要な要素。こだわりのデザインにしたいと考える方も多いでしょう。しかし建築基準法では、内装材の燃えやすさに制限を設けています。
具体的には、床面から高さ1.2m以上の壁や天井の仕上げ材には、不燃材料、準不燃材料、難燃材料といった「防火材料」を使用することが義務付けられています。
これらの防火材料は、燃焼のしにくさや有害ガスの発生量などに応じて3つの等級に分類されます。デザイン性だけでなく、防火性能も考慮した内装材選びが重要です。店舗の規模によっては、さらに厳しい基準が適用される場合もあるため、事前に専門家と相談することをおすすめします。
4-2.避難経路
火災発生時における安全な避難経路の確保も、建築基準法で定められた重要なポイントです。原則として、避難階以外の階で風俗営業を行う場合は、2つ以上の直通階段を設置する必要があります。
ただし、以下の条件をすべて満たす場合には、直通階段が1つでも認められる緩和措置があります。
・店舗の階数が5階以下であること
・居室の床面積の合計が100㎡以下(主要構造部が耐火構造または不燃材料の場合は200㎡以下)であること
・避難上有効なバルコニーや屋外通路が設置されていること
・屋外避難階段または特別避難階段が設置されていること
これらの条件に該当するかどうかは、建物の構造や規模によって異なります。専門家のアドバイスを受けながら、適切な避難経路を確保しましょう。
東京都都市整備局|避難施設の設置について(東京都建築安全条例第7条の2)
4-3.都道府県の条例
建築基準法に加えて、各都道府県が独自に定めた条例にも注意が必要です。これらの条例は、建築基準法の基準を上回る、より厳しい規制を設けている場合があります。
例えば、東京都の建築安全条例では、歌舞伎町ビル火災の教訓を踏まえ、雑居ビルにおける防火対策が強化されています。風俗営業店舗もこの規制の対象となり、避難経路の確保や防火設備の設置について、より厳格な基準が適用される可能性があるでしょう。
5.改修や模様替えに関する規制
風俗営業店舗の改修や模様替えを行う場合にも、建築基準法と風営法、両方の規制が密接に関連します。どんなケースでどんな手続きが必要になるのか、しっかりと確認しておきましょう。
5-1.風俗営業における構造・設備の変更
風俗営業店舗の構造や設備を変更する場合、風営法に基づき公安委員会への変更承認申請が必要となります。
家具の一部入れ替えといった軽微な内容であれば変更後の申請でも認められますが、店舗内装のリニューアル、音響設備や遊技機の入れ替えといった大規模な変更の場合は、事前の変更承認が必要です。
それぞれ内容によって申請期日が異なるため、警察署や行政書士に相談しながら手続きを進めましょう。
5-2.建築基準法における大規模修繕
建築基準法では、主要構造部(壁、床、柱、はり、屋根、階段など)の1種類以上について、過半の修繕を行うことを「大規模の修繕」と定義しています。
風俗営業店舗において大規模の修繕を行う場合は、建築基準法の規定に遵守し「建築確認申請」を行い、許可を得たうえで工事を進めなくてはなりません。
建築確認申請は一般的に建築士が代行するため、店舗設計は風営法に精通した設計事務所に依頼するのが望ましいでしょう。
6.まとめ|専門家のサポートで法令を遵守した風俗営業を
風俗営業の開業・営業にあたっては、風営法、建築基準法、消防法、3つの法規制が複雑に絡み合います。特に建築基準法は、店舗の安全性や利用者の安全確保に直結する重要な法律です。
この記事で解説した内容を参考に、建築基準法の基礎知識を身につけ適切な対策を講じてください。
しかし、すべての法規制を完璧に理解し、対応することは容易ではありません。開業準備を効率的に進め、法令遵守を徹底するためには、専門家との連携が不可欠です。それぞれの分野に精通した専門家のサポートを受ければ、安心して事業に専念できる環境を築くことができるでしょう。
行政書士法人ARUTOは、ナイトビジネスに特化した風営法手続きの専門家として、風俗営業の物件探しから許可取得、経営のサポートまで、幅広いサービス内容を提供しています。
風俗営業店に関するご相談があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。