飲食店でお酒を販売するには?必要な資格・手続き・注意点の完全ガイド

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コラム

目次

1.はじめに|飲食店でお酒を提供するための基本知識

お酒の提供や販売は、飲食店にとって重要な収益源の一つです。しかし、法律で定められた適切な手続きや免許がなければ、飲食店でのお酒の販売は違法となります。

この記事では、飲食店でお酒を提供する際に必要な資格や手続き、その際に注意すべきポイントについて解説します。

 

飲食店での「提供」と「販売」の違い

まず、知っておきたいのが「提供」と「販売」の違いです。一般的に、「提供」とは飲食店内で料理と一緒にお酒を出すことを指し、「販売」とはお酒そのものを商品として持ち帰り用に販売することを指します。この違いによって必要となる法的手続きが異なり、「販売」する場合は免許の取得が求められます。

 

お酒の提供に法律で定められている基準

お酒を提供するには法律で定められた基準があります。例えば、未成年者への提供の禁止や、過度の飲酒を助長しないことなど、事業者が守るべきルールが存在します。これらを遵守することが、安全で信頼される飲食店運営の基本となります。

次章からは、飲食店でお酒を提供・販売する際に必要な免許の詳細や取得条件について詳しく解説します。

 

 

2.酒類提供で必要な「一般酒類小売業免許」とは

一般酒類小売販売業免許の基本概要

飲食店でお酒を提供するには、通常「一般酒類小売業免許」が必要です。この免許は、酒類の販売や提供を許可するもので、日本国内でお酒を扱うすべての事業者が取得を義務付けられています。

この免許を取得することで、飲食店内での酒類提供が正式に許可されるほか、特定の条件下では持ち帰り用の販売(テイクアウト)やネット通販での販売も可能になります。ただし、免許の適用範囲や条件は細かく定められており、違反すると罰則が科されるため注意が必要です。

一般酒類小売業免許は、国税庁が管轄する免許であり、取得にはいくつかの条件を満たす必要があります。また、免許の申請から取得までには一定の期間がかかるため、飲食店をオープンする予定がある場合は、余裕を持ったスケジュールで申請手続きを進めるのが大切なポイントです。

 

3.一般酒類小売業免許の取得条件

3-1.免許取得のための主な要件

飲食店で「一般酒類小売業免許」を取得するためには、以下4つの要件を満たす必要があります。各項目で定められた条件をクリアすることで、合法的な酒類提供が可能となります。

 

人的要件

申請者や法人の役員に関する基準で、主に以下の条件を満たす必要があります。

 

  1. ・過去2年以内に国税や地方税の滞納処分を受けていないこと。
  2. ・酒税法やその他の法律違反で罰金刑や通告処分を受けた場合、その執行終了日から3年以上が経過していること。
  3. ・過去に酒類販売免許の取消処分を受けた場合、その取消から3年以上が経過していること。

 

場所的要件

酒類を提供・販売する場所に関して、主に以下の条件が求められます。

 

  1. ・酒類販売スペースが他の業態(飲食スペースやほかの販売所)と明確に区分されていること。例えば、壁や什器で物理的に仕切ることが必要です。
  2. ・販売スペースが独立しており、他の営業主体と区別がつく形になっていること(専用の販売従事者を設置するなど)。

 

経営基礎要件

飲食店の運営状況が健全で、酒類販売を適切に行うための基盤が整っていることを示す必要があります。主な条件は以下の通りです。

 

  1. ・国税または地方税を滞納していないこと。
  2. ・過去1年間に銀行取引停止処分を受けていないこと。
  3. ・直近の決算書において、繰越損失が資本金を上回っていないこと。
  4. ・直近3事業年度で、資本金の20%を超える欠損がないこと。
  5. ・申請者または経営者が酒類販売に関連する実務経験を有すること(酒類の製造業、販売業に3年以上従事した経験、または酒類販売管理研修の受講などで補完可能)。

 

需給調整要件

需給調整要件は、酒類販売が特定の会員や団体に限定されず、適正な仕入れと販売を行えるかを判断するものです。

酒類販売が飲食事業の補助的な目的であることを示し、飲食用と販売用の酒類を仕入れ・在庫管理などで明確に区分することが求められます。これらを徹底することで、適正な免許取得が可能となります。

 

3-2.飲食店で免許取得するための条件

飲食店が一般酒類小売業免許を取得する際には、以下の条件をクリアする必要があります。

 

陳列場所の区分

飲食店内での酒類販売スペースが明確に分けられていることが必要です。具体的には以下の対応が求められます。

 

・酒類の保管・陳列スペースが飲食スペースと、仕切りやフロアなどで物理的に仕切られていること。

・飲食客が酒類販売用のスペースを通過しない動線設計にすること。

 

管理の区分

飲食業務と酒類販売業務を明確に区分する必要があります。具体的には以下の条件が挙げられます。

 

  1. ・酒類の仕入れ、在庫、売上、会計を飲食用と販売用で分けて管理すること。
  2. ・会計場所を異なるものとし、販売用の酒類が飲食スペースを介する形で会計されないようにする。

 

4.一般酒類小売業免許の取得手続きと流れ

ステップ① 税務署で相談

まずは、税務署に行き酒類販売業免許について相談しましょう。酒類指導官がいる税務署を訪問すると、より詳細な説明を受けられます。また、相談時に以下を確認しておくと、手続きがよりスムーズに進むでしょう。

 

・必要な書類・費用

・取得までの期間

・具体的な準備内容

 

ステップ② 酒類販売管理講習を受講

酒類販売を行うためには、「酒類販売管理講習」の受講が必須です。この講習は3年に1回の受講が義務付けられているため、許可取得後も継続して対応していかなければなりません。

講習の日程は国税庁の指定団体が提供しており、事前に確認できます。

 

参考:国税庁|酒類販売管理研修実施団体の指定状況等及び研修実施予定について

 

ステップ③ 書類作成

申請に必要な書類は以下の通りです。

 

・酒類販売免許申請書

・販売免許申請書次葉

・役員や法人関係の書類(登記事項証明書、定款など)

・土地建物関係の書類(賃貸借契約書や登記事項証明書など)

・その他、残高証明書や店舗の図面など

 

必要に応じて、事前に税務署で詳細内容を確認しておくとスムーズに進みます。

 

ステップ④ 税務署へ書類を提出

作成した書類を管轄の税務署に提出します。審査には約2ヶ月かかり、その間に追加資料の提出が求められることもあります。迅速に対応できるよう準備しておきましょう。

 

ステップ⑤ 免許通知書の交付

審査を通過すると、免許通知書が発行されます。管轄の税務署における交付式では「酒類販売管理者の届出」や「登録免許税の納付」が必要です。この手続きが完了したら、酒類販売を開始できます。

 

 

5.まとめ|飲食店でのお酒「提供」と「販売」は分けて考える!

この記事では、飲食店でお酒を提供するために必要な資格や手続き、そして注意点について解説しました。最後に要点を振り返ってみましょう。

 

「提供」と「販売」の違いを理解することが重要

飲食店内での提供と持ち帰り用の販売では、必要な免許や法的な扱いが異なります。飲食店運営においては、この違いをしっかり理解しておくことが必須です。

 

「一般酒類小売業免許」の取得が鍵

飲食店でお酒を提供する際には、この免許を取得する必要があります。免許取得には、事業の適法性や運営体制が評価されるため、計画的な準備が求められます。

 

適切な手続きと遵法精神が大切

必要な書類を揃え、審査の流れを理解し、法令を遵守することが信頼される飲食店運営の基本です。また、未成年者への提供防止策や飲酒トラブルの回避についても十分な配慮が必要です。

 

 

渋谷区恵比寿を拠点とする行政書士法人ARUTOでは、酒類提供に関する許可申請やその他関連する手続きについて、書類作成から提出までをトータルでサポートしています。初めて許可申請をされる方や、手続きに不安のある方も安心してご相談いただけます。

飲食店の営業に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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