広告宣伝車「アドトラック」が使えなくなる?東京都の規制強化の内容とは

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コラム

目次

 

1.はじめに

大型トラック全面のラッピングと音響で、街ゆく人や建物内の人に強いインパクトを与える広告宣伝車「アドトラック」。

その宣伝効果の高さから利用する企業や団体も多く、都内の繁華街をメインに多くのトラックが走行しています。

アーティストやゲーム等のイベントPRなどに使われることが多いものの、やはり目立つのはキャバクラやホストクラブのド派手で煌びやかなトラックではないでしょうか。

ただし、風俗営業においてアドトラックを活用する場合には一定の規制を受けます。

さらに東京都では、アドトラックの規制を今後強化していく見込みです。強化の体制によっては、今後アドトラックが一掃される可能性も。

この記事では、アドトラックに関する規制、今後の見通しを解説します。

 

 

2.アドトラックは今後使えなくなる?

2-1.現在のアドトラックは条例の“抜け道”を利用

実は、派手な装飾と音響を使用するアドトラックの走行は東京都において基本的に認められていません。

2011年に改正された「屋外広告物条例施行規制」において、広告デザインの自主審査制度が導入され、過度に鮮やかな模様や色彩や、点滅する照明などを使用したトラックは運行が認められないこととなりました。そのため、多くのアドトラックは運行不可となっています。

それにもかかわらずアドトラックが運行を続けられる理由は、規制のない他県で登録した東京都以外のナンバー車両を使用しているからです。

 

2-2.今後は都外ナンバーも規制対象に

かねてより市民からの苦情が多く寄せられ、都の審議会でも「景観を乱す」、「光や音が交通事故を引き起こす危険性がある」との意見が出ていたアドトラック。

広告宣伝車に関する審議会では、1都3県(埼玉、千葉、神奈川)と5政令市が共同で規制のあり方について検討を進め、東京都は都外ナンバーの車両にも規制を拡大する方針を固めました。

2024年5月以降規制を拡大し、規制対象は都内を走行するすべての広告宣伝車に変わる見通しです。実効性を上げるため、審議会の含まれる3県と周辺自治体についても統一ルールを策定することが検討されています。

 

2-3.どんなデザインなら認められる?

今後は都外ナンバーの車両でも東京都へ屋外広告物の許可申請が必要になるアドトラック。現在走行しているような車両デザインは今後認められない可能性が高まります。

それでは、どのようなデザインであれば許可されるのでしょうか?デザインに関する基準をチェックしてみましょう。

 

【基本的事項】

・公序良俗に反しないこと

・公衆に対し、不安、不快の念を与えないこと

 

【具体的内容】

・過度に鮮やかな模様、色彩を使用しない

・絵柄や文字が過密でない

・彩度の高い色、原色、金銀色を広範囲に使用しない

・著しくどぎついデザインや、くどいデザインを使用しない

・照明は出来るだけ明るさを抑え、点滅は禁止

 

基準として書かれている文言は、やはり現在主流であるド派手なアドトラックのデザインを禁じるような内容です。

現状ほどの宣伝効果が期待できなくなる恐れがありますが、今後はアドトラックでも「爽やかでおとなしいデザイン」にシフトする必要があるのかもしれません。

 

参考:公益社団法人 東京屋外広告協会|Ⅵ.広告宣伝車自主審査基準

 

 

3.アドトラックに関する規制

アドトラックは、数々の規制に則した内容で運行する必要があります。

それぞれの規制内容を確認していきましょう。

 

3-1.風営法における規制

【風俗営業の広告又は宣伝の規制】

キャバクラやホストクラブの風俗営業者が広告主となってアドトラックを運行させる場合、「営業所周辺における清浄な風俗環境を害するおそれのある方法で広告又は宣伝をしてはならない」という規制を守らなければなりません。

卑猥な文言を使用したり、大音量の音響をかけたりする行為が禁止されます。

さらにパチンコ店に関しては、上記に加え射幸心をそそる内容の広告が禁止されており、警察庁からはより詳細な内容を規定する解釈の通達が出されています。

 

【性風俗特殊営業の広告又は宣伝の規制】

デリヘルやファッションヘルスなどの性風俗特殊営業は、さらに厳しい内容の規制が設けられています。

宣伝方法としては一般的な、ポスターや看板、チラシなどを用いての広告はすべて禁じられており、送迎車に店舗ロゴを印字したり、事務所の扉に店舗名の表札を出したりすることもNGです。

可能な広告宣伝方法は以下の2種類のみ。

  • ・ホームページ上での宣伝
  • ・風俗専門誌や紹介サイトへの広告出稿

よって、アドトラックを使用しての宣伝行為はほぼ不可能と言えるでしょう。

 

【東京都屋外広告物条例】

アドトラックに関するメインの規制ともいえる条例。街の良好な景観を形成し、公衆に対する危害を防止する目的で定められています。

前述の通り、東京都は広告宣伝車に関する規制を段階的に強め、2024年5月以降は他県ナンバーの車両についても規制対象となる見込みです。

この条例では、バス・タクシー・電車・広告宣伝車の車体デザインが審査対象となりますが、華美なデザインが特徴のアドトラックは、今後運行を続けていくのはかなり厳しいと言わざるを得ません。

 

【環境確保条例】

東京都の環境確保条例では、屋外の拡声器使用を禁止しています。

アドトラックでスピーカー等を使用する場合には当該条例の対象となりますが、商業宣伝を目的とした上で、以下の制限事項・遵守事項を守れば、使用が認められます。

 

・第1種および第2種低層住居専用地域、田園住居地域 並びに その周囲30m以内

(遵守事項を守り、自動車その他の方法により移動しながら使用する場合を除く)

・学校または病院の敷地の周囲30m以内

・航空機から機外に向けて使用してはならない

・午後7時から翌日午前8時までの間は使用しない

・使用時間は1回10分以内とし、1回につき15分以上の休止時間をおく(同一の場所で使用する場合)

・幅員5m未満(自動車等で移動しながら使用する場合は4m未満)の道路において使用しない

・間隔は50m以上とする(携帯用の拡声機を除く)

・地上10m以上の位置で使用しない

・地上5m以上の位置で使用するときは、道路方向に平行にし、かつ、水平方向から下方30度から45度までの角度で使用する(携帯用の拡声機を除く)

・拡声機から発する音量は、規制基準の範囲内とする

 

参考:東京都環境局|拡声器に対する規制

 

3-2.道路交通法における規制

【道路使用許可】

アドトラックの走行は広告宣伝を目的としているため、通常の道路使用とは異なる利用方法と認識されます。そのため、公道を走行する際には警察署から道路使用許可を受ける必要があります。

走行する日にちや時間帯、ルートなどを細かく記載した申請書類を、事前に管轄の警察署へ提出します。アドトラック利用時には運行業者が手続きをすることがほとんどですが、許可が下りていない場合取り締まりの対象となるため、広告主としても注意が必要です。

 

 

4.まとめ

運行に関する規制が強化される見通しのアドトラック。

今後は、新宿や渋谷の風物詩ともいえるギラギラのアドトラックが見られなくなるかもしれません。

アドトラックは宣伝効果が強いだけでなく、キャストのモチベーションアップや常連客へのアピールにも絶大な効果を発揮すると言われます。アドトラックの効果を実感し、多くの経費をかけている店舗は、今後の方針について検討する必要があるでしょう。

 

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