風営法違反の「行政処分」とは?罰則や違反行為の内容を解説

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コラム

目次

1.はじめに

キャバクラやバーといった風俗営業店では、風営法によって厳格に営業内容が規定されています。

風営法上の違反対象となる内容は、無許可営業や名義貸しなどの悪質な違反行為と捉えられるものから、従業者名簿の記載漏れといった比較的軽微なものまで多岐にわたります。

風営法違反における処分には「刑事処分」と「行政処分」の2つがありますが、令和4年での処分状況をみると、刑事処分に該当する検挙件数は874件、一方の行政処分の件数は3,820件と、圧倒的に行政処分の方が多くなっています。

今回は、許可取消や営業停止につながる「行政処分」にスポットを当てて、その罰則や違反行為の内容を解説します。

風俗営業店の経営に関わる方、これから開業しようとする方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

2.風営法違反における2つの処分

2-1.懲役や罰金が発生する「刑事処分」

「刑事処分」は、殺人や窃盗などに対する処分と同様、司法手続きにより下される処分です。違反した際には、警察による犯罪捜査を経て書類送検、その後、検察官による起訴から刑事裁判、という刑事訴訟法の流れに従って処理され、最終的に懲役刑、罰金刑、科料(1万円未満の財産刑)等の刑罰が科されます。

刑事処分が課される風営法上の違反行為は、その刑の軽重により7段階に分かれ、懲役刑は6カ月から2年以下まで、罰金刑は10万円から200万円以下までが設定され、併科されることもあります。

 

2-2.許可取消や停止を行う「行政処分」

一方の「行政処分」は、行政庁(公安委員会)が適正な営業をするよう指示監督するための処分行為です。違反行為が発覚したときに報告徴収、立入検査を行い、行為の悪質性を考慮した上で行政指導または行政処分を行います。

通常の手続きとしては行政指導を経て行政処分に至りますが、事案の悪質性が高い場合には、調査の後にいきなり行政処分に踏み切るケースもあります。

行政処分で科される内容は「許可の取り消し」「営業停止」「指示処分」の3つの処分です。多くのケースは「指示処分」に該当しますが、その処分内容に従わない場合には「許可の取り消し」「営業停止」といった重い処分が科されることになります。

なお、違反内容によっては刑事処分を受けた場合でも、あわせて行政処分が科されるケースもあります。

 

 

3.行政処分の対象となる違反行為と処分内容

ここからは、行政処分におけるケースごとの違反行為と処分の具体的な内容を解説します。

 

3-1.「許可の取り消し」のケース|名義貸しや未成年接待など

営業適正化のための段階的な処分の範囲を逸脱し、許可を継続する権利がないと判断された場合には、風俗営業許可の取り消し処分が下されます。

違反対象となる主な行為は以下の通りです。

 

  1. ・構造や設備について承認を受けず変更した
  2. ・不正な手段で構造や設備変更の承認を受けた
  3. ・名義貸し
  4. ・18歳未満の者に客の接待をさせた
  5. ・午後10時から午前6時までの間、18歳未満の者を客に接する業務をさせた
  6. ・営業停止命令に違反しての営業
  7. ・禁止場所での営業
  8. ・その他の法令規定に違反する行為

 

風営法では、店舗構造や設備について申請内容通りの状態を維持することが求められます。経営者があずかり知らぬうちにスタッフが模様替えなどを行わないよう、周知する必要があります。

 

3-2.「営業停止」のケース|客引きや賞品提供など

営業停止の処分は違反行為の内容により停止期間に差が生じます。それぞれの主なケースを見ていきましょう。

 

【40日以上6か月以下の営業停止命令(基準期間は3か月)】

  1. ・不正な手段による許可取得
  2. ・客引き行為
  3. ・18歳未満の者を客として立ち入らせた
  4. ・20歳未満の者への酒類、たばこの提供
  5. ・マージャンやゲームセンターなどにおける現金の賞品提供または買い取り
  6. ・性風俗特殊営業で違反となる広告宣伝

 

【20日以上6カ月以下の営業停止命令(基準期間は40日)】

  1. ・営業時間の制限外の営業
  2. ・パチンコやゲームセンター等において玉やメダルなどを営業所外に持ち出させた
  3. ・性風俗特殊営業で違反となる広告宣伝
  4. ・許可申請書や添付書類への虚偽記載

 

【20日以下の営業停止命令】

  1. ・警察職員の立ち入り拒否:10日以上80日以下の営業停止命令(基準期間20日)
  2. ・管理者の非選任:5日以上40日以下の営業停止命令(基準期間は14日)
  3. ・変更事項に関する無届出:5日以上20日以下の営業停止命令(基準期間は7日)

 

3-3.「指示処分」のケース|許可証掲示なしや従業者名簿の虚偽記載など

風営法違反で最も多いのは「従業員名簿の備付義務」違反により指示処分を受けるケースです。スタッフが頻繁に入れ替わる店舗などではつい記載漏れ等が生じてしまう場合もありますが、常時ぬかりなく備えなければなりません。

指示処分で改善が見られない場合には営業停止処分が下される恐れもあるため注意が必要です。

 

  1. ・営業所内の見やすい場所に許可証を掲示していない
  2. ・相続や法人の合併・分割承継を受けたにもかかわらず許可証の書換えをしていない
  3. ・変更事項に関する届出をしていない
  4. ・営業していない状況なのに許可証や認定証を返納していない
  5. ・壁やドアなど見やすい場所に料金表などを掲示していない
  6. ・従業者名簿を備え付けていない、必要な記載をしない、虚偽の記載をした
  7. ・18歳未満の客立ち入り禁止の表示をしていない

従業者名簿の書式はコチラ

 

4.まとめ

「長年営業しているが指摘されていない」、「従業者名簿の管理はスタッフに任せている」そんな考えで経営を続けるのは少々危険かもしれません。特に違反行為に該当することはないと考えていても、刑事処分や行政処分の対象となってしまうケースは少なくないのが現状です。

処分を受けることになれば、今後の経営に大きなリスクを負ってしまいます。店舗構造や営業内容を定期的に見直し、気になることがあれば風営法に精通した行政書士に相談することをおすすめします。

 

ナイトビジネス専門の行政書士法人ARUTOでは、風俗営業に関する許可申請を中心に年間300件を超える案件に関わっています。

風俗営業許可の申請から経営のサポートまで、ぜひお気軽にご相談ください。

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