2023年2月12日公開 / 2026年11月更新

1.はじめに
「18歳の高校生なんですが、採用していいですか。もうすぐ卒業です」
満18歳の高校生は、風営法や労働基準法の「18歳未満」に対する年齢規制には入りません。ただし、成人だから、どの店でも、どの仕事でも任せてよいということではありません。
こうした採用相談があります。確認したいのは、高校生という肩書きだけではなく、店の営業内容と、本人に担当してもらう仕事です。
学校のルールや卒業後の進路、勤務時間との兼ね合いもあります。そして、私が採用相談で気になるのは、飲酒よりも喫煙エリアです。
18歳で成人になっても、20歳未満の従業員を立ち入らせてはいけない場所があります。採用してから「その席には行けません」と分かるのでは、店のシフトも本人の仕事も困ってしまいます。
2.満18歳なら何が変わるか

成年年齢と、仕事ごとの年齢規制は分けて考える
2022年4月に民法の成年年齢が18歳になり、原則として親の同意を得ずに契約できるようになりました。
ただし、風営法や労働基準法の年齢規制が、すべてこの改正で変わったわけではありません。それぞれの法律が、どの行為を何歳未満に禁止しているかを確認します。
風俗営業の営業所で18歳未満の人に接待をさせることは、風営法で禁止されています。昼間だからよい、保護者が同意しているからよい、というものではありません。
また、風営法22条1項4号の、18歳未満の人を客に接する業務に従事させてはいけない時間は、午後10時から翌午前6時までです。接待だけでなく、客に接する業務が対象です。
一方、労働基準法61条の、18歳未満の深夜労働の禁止は、原則として午後10時から翌午前5時まで。二つの法律で終了時刻が違います。適用される営業で「朝5時になったから接客できる」と判断しないでください。(風営法22条・労働基準法61条)
満18歳になれば、これらの「18歳未満」という年齢条件からは外れます。高校を卒業したかどうかや、全日制・通信制の違いで、この線引きが変わるわけではありません。
飲食店営業には風営法32条3項による準用もあります。営業内容による除外規定があるため、一般の飲食店を含めてすべて同じ取扱いとはせず、その店の営業区分を確認します。
「風俗営業」と「性風俗関連特殊営業」は同じ意味ではない
「風俗」という言葉から、性風俗の店だけを思い浮かべる方もいると思います。しかし、風営法の風俗営業には、接待飲食店のほか、遊技場なども含まれます。
例えばポーカーバーも、営業の内容によっては、風俗営業5号の許可を検討する対象です。「バー」という名前だけで、通常の飲食店だと決まるわけではありません。
風俗営業と性風俗関連特殊営業は、法律上別の営業区分です。高校生を採用してよいかという相談でも、まずその店が何をする店なのかを整理する必要があります。(風営法2条)
3.学校・進路との兼ね合い

法律の年齢条件とは別に、学校のルールは確認します。アルバイトの許可や届出が必要なのか、業種や時間帯に制限があるのか。学校ごとの取扱いを確かめず、「18歳なら学校も関係ない」とは言えません。
通信制だから自由に働ける、もうすぐ卒業だから何も確認しなくてよい、と決めるのも早いと思います。授業や課題、卒業までの予定、進学・就職後に続けられる勤務時間を、本人と確認しておきたいところです。
だからといって、私は、高校生であることだけを理由に、一律に採用してはいけないと言いたいわけではありません。
店の営業実態と、担当する仕事を具体的に見て判断する。年齢上の条件を満たしていても、学校生活と両立しないシフトや、入れない場所での接客を前提にした採用になっていないかを確認します。
「採用できますか」という質問に答えるには、「どんな仕事を、どの時間に、どの場所でしてもらう予定ですか」という情報が必要なのです。
4.20歳未満と喫煙エリア

本人が吸わなくても、従業員でも入れない
私が採用相談で気になるのは、飲酒よりも喫煙エリアです。
もちろん、飲酒・喫煙が20歳からであることは変わりません。しかし、採用の場面では、本人に「吸わないでね」と伝えるだけでは済まない問題があります。
健康増進法に基づく喫煙専用室、加熱式たばこ専用喫煙室、喫煙目的室、喫煙可能室などには、20歳未満の人を立ち入らせることができません。これは客だけでなく、従業員も同じです。(健康増進法)
本人がたばこを吸うかどうかではなく、その場所に入れるかどうかの話です。本人や保護者の同意があっても、この禁止がなくなるわけではありません。
店全体か、一部の場所かで、任せられる仕事が違う
店全体を適法な喫煙可能エリアとしている場合、20歳未満の従業員をその店内に入れて働かせることはできません。
一方、店内の一部に喫煙室を設け、ほかは禁煙としている店であれば、喫煙室に入らない仕事を分けられるかを確認することになります。喫煙室があるというだけで、店全体のすべての仕事ができない、と一括りにするわけではありません。
例えば、飲食できる種類の喫煙室に料理や飲み物を運ぶ仕事、食器を下げる仕事。清掃も含め、喫煙エリアへの立入りが必要な業務を20歳未満の従業員に任せない運用が必要です。喫煙専用室は、そもそも飲食ができる部屋ではないことにも注意してください。
忙しい時間に「ちょっと片付けてきて」と頼むことはないか。20歳以上の担当者が休んだ日はどうするか。採用時に仕事を分けても、実際のシフトで守れなければ意味がありません。
私は、採用条件だけでなく、店内の区画とスタッフの動きまで確認しておくことが大切だと考えています。
加熱式たばこ、電子たばこ、シーシャを名前だけで判断しない
加熱式たばこは、健康増進法の規制対象です。「紙巻きではないから」「加熱式だけの店だから」という理由で、20歳未満の従業員が喫煙エリアに入れるようにはなりません。
一方、たばこ葉を原料としない、いわゆる電子たばこは、加熱式たばこと同じものではありません。厚生労働省のQ&Aでも、製造たばこ・製造たばこ代用品に当たらない電子たばこは、同法の規制対象外とされています。ただし、施設のルールや地域の規制は別途確認します。
シーシャも、店名や「水たばこ」という呼び方だけではなく、実際に使う製品を確認します。たばこ葉を使う水たばこなのか、使わない製品なのか。対象製品と、その店の喫煙区画・営業形態を確かめて判断する必要があります。
「保健所が来ました」という相談もある
「保健所が来ました」という相談を受けたことがあります。
なぜ訪問したのか、何がきっかけだったのかは、ここでは分かりません。苦情や通報があったと推測する話ではありません。
採用の相談では風営法に目が向きやすいですが、喫煙エリアの運用は受動喫煙対策の確認も必要です。店が扱う法律を、風営法だけに絞って考えないことです。
5.採用前に確認すること

採用を決める前に、次の情報を並べてみてください。
書類の年齢と、目の前の本人が一致しているか
高校生の場合、運転免許証のような写真付きの公的身分証を持っている人は少ないのではないか、と私は感じています。本人確認のしにくさにも、雇う側は注意を払いたいところです。
例えば、兄弟の住民票を持ってきたらどうでしょうか。これは実際に担当した事件として紹介するのではなく、なりすましを防ぐために考えておきたい例です。
書類に18歳と記載されていても、それだけで、提出した人がその書類の本人だと確認できるわけではありません。書類の記載内容と、目の前の応募者が一致しているかを別に確かめる必要があります。
法令で求められる確認書類と、なりすまし防止のための補助的な本人確認は分けて考えます。写真付きの書類があれば、顔写真や氏名などを本人と照合することが役立ちますが、運転免許証を全員の必須条件にするという意味ではありません。写真付きの書類だけで、風営法上の確認事項がすべて揃うとも限りません。
写真付きの書類がない場合も、必要な確認書類と補助資料の整合性を確認し、疑問が残るまま接客に就かせないこと。確認方法や必要書類は、営業区分に応じて所轄へ確認します。ここで述べた年齢・本人照合のために、個人番号(マイナンバー)を集める必要はありません。税・社会保険の手続とは分けて扱います。
年齢・仕事内容・勤務場所を並べて確認する
本人の年齢、必要な確認書類、提出者との一致
「今年18歳」「高校3年生」ではなく、生年月日で確認します。風営法上の従業者名簿と、接客従業者の生年月日等の確認・記録については、対象となる営業と業務の範囲を確認してください。すべての飲食店に同じ義務があるわけではありません。(風営法36条・36条の2)
店の営業内容と、担当させる仕事
接待をするのか、ゲームのサービスをするのか、配膳・片付けを担当するのか。許可・届出の内容と、実際に任せる仕事を照らし合わせます。
学校・進路と、勤務予定
学校のルール、卒業までの予定、卒業後の進路、出勤できる曜日や時間を確認します。勤務時間・休憩・賃金など、18歳以上にも適用される労働法のルールも守ります。
喫煙区画と、当日のスタッフ配置
店全体が喫煙エリアなのか、一部なのか。20歳未満の従業員が、その区画に入らずに仕事を続けられるか。配膳・片付け・清掃と、欠勤時の担当変更まで整理しておきます。
高校生だから一律に不可、成人だから一律に大丈夫。そのどちらでもなく、店の営業と本人の担当業務を具体的に確認して、採用を判断してください。
6.相談案内|営業内容と、実際に任せる仕事を整理しましょう
ご相談の際は、本人の年齢、許可・届出の内容、店舗の平面図と喫煙区画、担当業務、勤務予定をご用意ください。採用できるかだけでなく、実際にその仕事を任せられるかを確認します。
行政書士法人ARUTOは、相談・許可申請を年間300件以上サポートしています。高校生から応募があった、喫煙できる店で20歳未満の人を採用したい、担当業務と許可の関係を確認したいなど、具体的な営業内容をもとにご相談ください。
労務の専門判断は社労士等に、喫煙区画や受動喫煙対策の個別の取扱いは管轄の保健所等に確認するなど、必要な確認先も切り分けて整理します。


